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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第78章
「あはは。パパラッチの写真、撮っておけばよかったね?」
サラの年頃の少女らしい感想にヴィヴィは破顔した。
「あっ しくじった……っ!」
頭を抱えて悔しそうにするサラに笑いながら、ヴィヴィは自分のカフェオレボウルを両手に包む。
「いつもはこんなじゃないんだ。……四大陸で、ヴィヴィ。FPの構成点が散々だったでしょ? それでこんなに騒がれて……」
ノンシュガーのカフェオレに映り込む、黒い影の自分を見つめながら、ヴィヴィはそうぼそぼそと呟く。
「世界選手権ではどんな点が出るかって?」
「うん……」
「そっか~。グレコリー叔父さんは今日、バーミンガム入りするんだよね?」
サラの言うとおり、父は今日のクリスのFPに間に合うよう、渡英してくる。
「うん。ダッド、仕事忙しい時期だから、私達のFPだけ観戦に来るの」
「匠海は?」
そう聞いてまたココアに口を付けたサラに、ヴィヴィは首を傾げる。
「え、お兄ちゃん? ……は、明日の夜、ヴィヴィのFPに間に合うか間に合わないかだって。大学と仕事、忙しいからね」
「じゃあ大丈夫。明日のFPは完璧!」
そう言って満面の笑みで親指を立ててみせるサラに、
「え……? どうして?」
とヴィヴィは尋ねる。
「だって、匠海が観戦に来るんだもん! 匠海は絶対にヴィヴィの出番には、間に合うように来る筈だし~」
えらく自信満々にそう言い切るサラに、ヴィヴィは目をぱちくりさせる。
「それは、どう、だろう……?」
自信なさ気に呟いたヴィヴィに、サラは続ける。
「大丈夫! だって、匠海、昔っからヴィヴィのこと、猫っ可愛がりしてたし~。今でも危なっかしくて目が離せないから、ヴィヴィの後を付いて回ってるって感じだし」
「……そう……?」
「うん。で、『お兄ちゃん』ラブのヴィヴィは、匠海がいれば、百人力っ!」
そう言って両腕で力こぶを作る真似をしてみせるサラに、ヴィヴィは吹き出す。
「あははっ だといいな~」
「そうなるって。ほれ、甘いもの食べて、元気出せ~」
そう言って、スプーンでココアの上の生クリームを、たっぷりすくったサラは、それをヴィヴィに寄越した。