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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第78章
実は「美味しそうだな~、でもカロリーがぁ……」と思っていたヴィヴィは、瞳を輝かせてそれにぱくついた。
「ん~~っ 甘いっ!」
頬を両手で押さえて幸せそうににやけるヴィヴィに、サラも微笑む。
「そうか。トップスケーターも大変だねぇ……、チヤホヤされたり、追いかけられたり、色々言われるし」
自分も生クリームを食べたサラは、肩を竦めてヴィヴィを見つめてくる。
「……まあ、ね。でも『自分のやりたい事出来てるんだから、いいんだ!』って思うことにしてる」
たまに凹むけれど……と、心の中で付け加えたが。
「お~っ! えらいね。『お子ちゃま』ヴィヴィが、成長してる」
「『お子ちゃま』じゃな~~い!」
ヴィヴィはそう必死に抵抗したのだが、サラに「はいはい」と流されて、ぶうと頬を膨らませたのだった。
3月16日(金)。
午前中、公式練習に参加したヴィヴィは、ジャンプも決まり肉体的には絶好調だった。
精神的にはどうかというと、今、整えていた。
試合でピークパフォーマンスが出来るように行う、イメージトレーニング。
ホテルの部屋で柿田トレーナーと直前のチェック項目を復唱し、用意して貰った動画を確認する。
全日本選手権やグランプリファイナルの良い演技を繋ぎ合わせ、編集されたそれを見ながら、頭の中で良いイメージだけを作り上げていく。
2度繰り返して観たヴィヴィは、傍にいる柿田トレーナーを見上げる。
「いい感じ?」
「いい感じ、ですっ」
柿田トレーナーににっと笑ってみせたヴィヴィは、栄養士が用意してくれたおにぎり頬張る。
「美味しい~。やっぱり日本人は米でしょ~っ」
どこからどう見ても欧米人のヴィヴィが、緑茶を啜りながらそう言えば、周りが笑いに包まれる。
『お嬢様はサービス精神が旺盛で、
常に周りを楽しませようと無自覚でされています』
ふと朝比奈に言われた言葉が脳裏をよぎった。
自分ではそんなつもりがないのだが、確かにそう言われてみれば、クラスでもそういう役割を担っている様な気もする。
(っていうか、ヴィヴィがお馬鹿さんだから、ただ笑われてるだけの気もするけど……)
濃い緑茶の旨みにうっとりして瞼を閉じたヴィヴィは、自分に言い聞かす。