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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第15章
二月頭に行われた世界ジュニアも見事優勝を果たした双子は、三月に中等部を卒業し、春休みを挟んで四月頭に高等部への入学と国別対抗戦への出場が予定されていた。
春休みの時間を使って、双子は篠宮邸のライブラリーにある歌劇やバレエ、演劇のDVDを見たり、実際に舞台や映画を見に行ったりしてオリンピックシーズンに使いたい曲を探していた。
クリスが映画のサントラを聞いている横で、ヴィヴィはネットの動画サイトでいい曲がないか調べていた。
「どう、クリス……いいのあった?」
「うん……SPの候補はいくつかある……でもFSは全然……」
肩を竦めてCDの説明書を読み始めたクリスに、ヴィヴィは
「私なんか、一曲も候補ないよ~〜」
と、ソファーの背もたれにボスと凭れ掛かる。
「いつも自分達で曲を選ぶの?」
ふいに二人に女性の声が掛けられる。双子は女性に振り返り首を振って見せる。
「今シーズン初めて自分達の滑ってみたい曲をマム――コーチに言ったら滑らせてくれたんです。だから来シーズンも自分達でやりたいものを、言ってみようかなって」
「滑らせてもらえる保証は、どこにもないけど……」
ヴィヴィの希望的観測な返事に、クリスが現実をぼそりと呟く。
「やっぱり自分のやりたい曲のほうがテンション上がる?」
女性――三田ディレクターの言葉に、双子はそろって大きく頷いた。
何故、篠宮邸に三田ディレクターがいるのか――話は一週間前に遡る。
「明後日からNHKの『アスリートの魂』の密着取材が入るから」
練習後、フィットネスルームで念入りにストレッチをしていた双子に、大きなバランスボールに腰を下ろした牧野マネージャーがそう告げた。
「…………は?」
開脚をしてマットに突っ伏していたヴィヴィからくぐもったつぶやきが漏れる。
「だから……NHKの密着取材が入るよって」
「密着って、どれくらい……?」
スラックライン(ベルト状の綱渡り器具)でバランスを取っていたクリスが質問する。
「ええと、二回に分かれていて……一回目が明後日から大体夏まで密着して、秋に放送するって。で、二回目は――」
「え、待って……」
バランスを失ってベルトから落ちたクリスは、牧野の言葉を遮る。
「な、なんでまだ無名の僕らに……?」