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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第15章
「何言ってんの? 今や篠宮兄妹といえば、フィギュアファンならずとも国民のほとんどが知ってるんだよ。なんたって、全日本フィギュアに十四歳でしかも双子で優勝しちゃったんだから。テレビにもいっぱい出てたでしょう?」
牧野マネージャーが言うように全日本フィギュア以降、双子はテレビにちょくちょく出ていた。
二月の世界ジュニアでの優勝も、翌日のニュースで各局で大きく取り上げられたのだ。
「最近忙しくて、テレビ見てないもん。っていうか、三月から夏までってほぼオフシーズンでしょう? 何を撮りたいの?」
四月に国別対抗戦を控えているとはいえ、それを最後に今シーズンは終了する。
体を起こしたヴィヴィが困惑したように呟く。
「プログラムを作りあげていくところを撮りたいんだって」
「「プログラム?」」
ハモった双子に、牧野マネージャーが頷く。
「昨シーズンに比べて今シーズン、二人ともプログラムの傾向がガラッと変わったでしょう。特にヴィヴィは『ジャンプの篠宮』って言われていたのが『演技力の篠宮』に変わったって言われている。エキシビジョンを自分で創ったというのも話題になったしね」
「へえ、知らなかった」
他人事のようにそう言ったヴィヴィだったが、クリスが不満気に口をはさむ。
「じゃあ、ヴィヴィだけでいいじゃん……」
「分かってないな、クリス。そんなのは建前で、本当に撮りたいのは双子の素顔やスケートに臨む姿勢だよ。君達は人気あるし、オリンピックでのメダルも期待されてるしね」
牧野のその説明にクリスの顔が曇る。
「ああ……『客寄せパンダ』……」
そう呟いてクリスが近くの椅子にへたり込むように座った時、ジュリアンがフィットネスルームに顔を出した。
「牧野マネージャー、話しておいてくれた?」
「はい、まだ途中ですけれど」
牧野は流暢な英語でそう返す。
「ま、そういうことよ。ところで貴方達――自分はどこの国の人だと思ってる?」
生まれて初めて母からそんなことを聞かれ、双子は顔を見合わせた。
「……僕は、日本人かな……生まれてからずっと日本にいるし……」
考え込んでいたクリスがそう口を開き、ヴィヴィに視線を移す。
三人の視線を受けたヴィヴィは眉を寄せて困ったように首を傾けた。