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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第78章
「う、うん……、あ、忙しいのに来てくれて、ありがとう」
ドキドキと高鳴り始めた胸に焦りながら兄に礼を言うと、片手でその胸に抱き寄せられた。
ワイングラスを手にしていなかったら、両手でぎゅってしてもらえたのに……と、ヴィヴィは少々残念だったが、それでも久しぶりの兄の抱擁に心の底から嬉しさが湧き上がってくる。
「間に合ったよ、ヴィヴィのFPに。とても愛らしいオーロラ姫だった」
抱擁を解いた匠海がそう褒めてくれて、ヴィヴィは驚く。
「ほ、んと……?」
(嬉しい……。最後の最後で、お兄ちゃんに「愛らしいオーロラ姫」って言って貰えて……)
「ああ、見ているこちらまで笑顔になるくらい可愛かったよ。しかし凄いな……。また世界一だもんな、双子揃って」
そう手放しで褒められ、ヴィヴィの小さな顔がにやける。
「えへへ、ありがとう」
(色々とあったシーズンだったけれど、英国にいるお兄ちゃんにも観て貰えて、いい締め括りだったな……)
「よく頑張ったね、お疲れ様」
大きな掌でぽんぽんと頭を撫でてくれた匠海だったが、ふとその手を止めた。
「あれ、ヴィヴィ、お前、髪濡れてる……」
華奢な肩に落ちている金色の髪の束を掴んだ匠海が、そう指摘してきてヴィヴィは弁解する。
「あ……、急いでたから」
(早く、お兄ちゃんに会いたかったんだもの……)
ヴィヴィは自分でも指で髪に触れるが、結構乾いているほうだった。
「馬鹿。風邪ひくだろ、気をつけろ」
そうぴしゃりと言われた上に、軽く拳でこつりとやられ、ヴィヴィはオーバーに両手で叩かれたところを覆った。
「は~~い……」
そう間延びした返事を返しながらも、心の中はさらにドキドキしていた。
(もうお兄ちゃんってば、さらに恰好良くなってる気がする……。一人暮らししてるせいか、なんか纏ってる空気がどんどん大人っぽくなって……)
白シャツに黒ジャケット、グレーの細いストールを巻いて下はデニムと、すっきりした大人のコーディネートに、ヴィヴィは自分の纏っている洋服を見下ろし、「とほほ……」と心の中でぼやく。