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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第78章
両家の親族は皆、「どこにそんなバイタリティーが?」と確認したくなるくらい、アクティブで無駄に元気なのだ。
「お、お疲れ。そんな頑張ったクリスちゃんは、ヴィヴィがお部屋まで送ってあげよう~」
おどけてみせるヴィヴィは、クリスの腰に手を添えてエレベーターに乗り込む。
「添い寝もして……」
そう言って二人しかいないエレベーターで、妹を抱きしめてきたクリスに、ヴィヴィは首を傾げる。
「え……。お風呂あがるまで、待ってるの……?」
(それ、もう2時位になるんじゃ……? ヴィヴィ、待ってる間に寝ちゃいそう……)
ぽんぽんとクリスの背中を叩いていると、ゆっくり抱擁を解かれた。
ポーンという音と共に開いたエレベーターの扉から、クリスが出ていく。
「……じゃあ、いい」
そうぼそりと返された言葉に、ヴィヴィは追い駆けていく。
「クリス……?」
廊下の先、一つの扉の前で立ち止まったクリスは、カードキーを差し込み扉を開く。
ヴィヴィと同じく、受験生ということでスケ連が一人部屋を用意してくれた、クリスの部屋は暗かった。
「じゃあ、クリス、ちゃんと寝て――」
そう呟いたヴィヴィは、さっと腕を引かれた。
そして気づいた時にはクリスの胸の中に抱き込まれていた。
ぱたんと音を立てて閉まった扉で、部屋の中が暗くなる。
「……クリス……?」
そう双子の兄を静かに呼べば、さらにぎゅうと強い力で抱き寄せられる。
嗅ぎ慣れたクリスの香りが自分に纏わり付き、ヴィヴィはその腰に恐る恐る両腕を回す。
「クリス、どうし――」
「行くの?」
ヴィヴィの問い掛けに被せてそう尋ねてきたクリスに、ヴィヴィははっと体を強張らせた。
その短い言葉に含まれた色んな意味に、ヴィヴィは瞳を細める。
(そっか……、クリスは、知ってるんだった……、ヴィヴィと、お兄ちゃんの関係……)
そして自分は、クリスを部屋に送った後、同じホテルに泊まる匠海の部屋に向かうつもりだった。