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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第78章
ほとんど迷いなく目的の部屋を探し当てたヴィヴィは、その目の前で立ち止まり、さっと左右の廊下に誰もいない事を確認する。
細い指先が呼び鈴を押し、部屋の中から鈍いブザー音が鳴る。
少し遅れて聞こえてきた小さな足音に、ヴィヴィはぎゅっと瞼を瞑る。
(クリス……貴方はもう、私達の――ううん、
ヴィヴィの “共犯者” なの――)
かちゃりと扉の開く音と共に瞼を持ち上げたヴィヴィの心には、もうクリスの事など一片も残っていなかった。
「お兄ちゃん……」
ヴィヴィはふわりと幸せそうに微笑み、目の前の匠海を見上げる。
すっと伸ばした細い腕が掴まれ、文字通り中へと引き摺り込まれた。
背中に感じる、押し付けられた固い壁。
首の後ろと顎に添えられた、大きな手。
そして縦横無尽に自分の口内を味わい尽くす、厚い舌。
それら全てを感じながら、ヴィヴィは匠海のジャケットの襟に縋り付く。
(もっと、もっと、ヴィヴィを求めて……。
今だけでも、それでも、いいから――)
兄に掻き回される口内は途轍もなく気持ちいいのに、その先に続く喉は何者かに絞められた様に苦しい。
「んっ ……ふっ ……ぅん」
互いの唇の隙間から漏れる声さえ吸い取るように、何度も角度を変えて貪られる。
咬み付いて。
引き裂いて。
捕り込んで。
ヴィヴィは、お兄ちゃんと、一つになりたいの。
そう思いながら匠海に全てを委ねていたヴィヴィだったが、やがてその兄の躰が小さく震えていることに気付く。
そして、自分の躰も、何にか判らないが震えていた。
「会いたかったよ、ヴィクトリア」
やっと唇を離した匠海が、ヴィヴィを見下ろしてくる。
そう言葉を紡いだその唇は、互いの唾液に濡れ、厭らしく艶々と光を跳ね返していた。
「お兄、ちゃん……っ」
何故か、自分の口から苦しそうな声が零れる。
「お前の画像や映像を目にする度に、この白い肌に触れて、柔らかさを、お前の香りを確かめたかった」
大きな掌で妹の輪郭を辿る匠海に、ヴィヴィは瞳を細める。
「……――っ ヴィヴィもっ」
(ヴィヴィも、お兄ちゃんと電話で顔を見る度、同じこと思ってた……っ)