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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第15章
「う~ん……日本人半分、イギリス人半分かな……学校が英国式だし、フィギュアで知り合った子以外で日本人の友達は皆無だし……」
正直に心の内を語った双子に、ジュリアンはうんうんと頷く。
「貴方達は英国の血が3/4も入っているから、見た目は日本人じゃないのよ。勿論恵まれた容姿と体格はスケートには持って来いなんだけれどね」
ジュリアンの言わんとすることが何となく分かり、ヴィヴィはストレッチマットの上で居住まいを正す。
「金髪と白い肌、その眼の色はとても綺麗で魅力的だけれど、あなたたちの弱点でもあるの――。あなたたちは日本代表なのになぜ外人みたいなのかって、やっぱり年配の方とかは思うわけ」
「確かに……最初の頃はよく日本のメディアにも『どうして日本のスケート連盟に所属しているの』って聞かれた……」
ヴィヴィの言葉に、クリスも頷く。
「最近は英国の記者に『英国代表でオリンピックに出て欲しいって、英国国民は思ってる』って言われたし……」
日本程ではないにしても、英国はフィギュアが人気だ。
けれどここ何年も、国際大会に目立った選手を輩出していない。
「日本代表でオリンピックに出るんだったら、少しでも日本国民に応援・支持されて出たいじゃない? だから日本のみんなに貴方達の人となりを知ってもらって気に入ってもらえるように、今年はメディアへ積極的に出るのよ」
ジュリアンの説得力のある言葉に、双子は目から鱗が落ちたようだった。
「そっか、そうだね……」
「それに、スポンサーも見つかりやすくなるかも……」
何とか納得したような双子に、今迄黙って事の行方を見守っていた牧野マネージャーが口を挟む。
「まあ密着って言っても、二十四時間べったりって訳でもないし、そんなに気負うことはないと思うよ。あと二回目の密着は十月からオリンピックまでで、世界選手権の前ぐらいに放送予定らしいよ」
そういういきさつで、双子には三田ディレクターが密着している。
ほとんど彼女一人でやって来てハンディーカメラで撮影して取材しているので、そんなに撮影されているという感じもしなかった。
それに国営放送局だから変なことは放送しないだろうと、双子は徐々に三田ディレクターの前でも普段通りに過ごすようになってきた。