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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第79章            

「……お兄、ちゃん……?」

(どう、したの……? やっぱり、そんなに寂しかったの……?)

 腰を掴んだままだった妹から手を放した匠海は、その手を優しく握ってヴィヴィに甘えてくる。

「ヴィクトリア、俺に跨って?」

「……もう、えっちな事、しない?」

 恐るおそるそう尋ねれば、

「しない。滑れなくなるからな」

と正当な答えが返ってくる。 

(ええ、本当に……)

 心の中でそう同感したヴィヴィは言われた通り、匠海の股の間に正面から躰を滑り込ませ、恐々両脚で兄の両脚に跨った。

 向かい合わせになった妹の髪を優しく撫でながら、匠海は苦笑する。

「からかっただけだ。お前は手だけでなく、どこもかしこも可愛いよ。何してる時でもな?」

「ほんと……?」

 まだ疑わしそうに自分を覗き込んでくる妹に、匠海が頷いて微笑む。

「ふ……、本当」

 その答えを聞いて、ヴィヴィも微笑む。

「ヴィヴィも。お兄ちゃんは本当に何してても、カッコいいよ。うふふ」

 兄の肩に手を添えて匠海の唇にちゅっと吸い付けば、柔らかいキスを何度も与えてくれた。

「ねえ、お兄ちゃん……。ずっと疑問だったんだけど……。なんで毎回、スィートに泊まるの?」

 ヴィヴィはこてと首を倒して兄を見上げる。

(お兄ちゃんがお金持ちなのは、ヴィヴィ、分かったけど……)

 といってもエクゼクティブ・スィートとか、2つ以上ベッドルームがありそうなとびぬけて高額のものではなく、“続き間”という意味のスィート。

 今まで匠海が泊まってきたホテルは、広いリビングルームに寝室、独立した広いバスルームが少なくとも完備されていた。

「……お前、本当に分らないのか?」

 切れ長の瞳をぱちりと瞬いてそう聞き返してくる匠海に、ヴィヴィは戸惑いながら頷く。

「え……? う、うん……」

(あれ? お兄ちゃん、閉所恐怖症とかだったけ……?)

「もし、俺が寝室とバスルームしかない普通の部屋でお前を抱いて、ヴィクトリアが俺を求めて『お兄ちゃん』って喘いでる声、他の人間に聞かれてみろ」

「あ……っ」

 ヴィヴィはそこまで説明されて、やっと気付いた。

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