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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第15章
しかし井戸から出てきたヨハナーンはサロメの母ヘロディアスの近親婚の罪を咎めるだけで、サロメの誘いには目もくれない。
サロメが口づけを求めると、ヨハナーンは「呪われよ」と言い捨て井戸の底へと戻っていった。
義娘サロメのことを追ってヘロデ王がテラスに出て、その後を妻ヘロディアスが追ってくる。
地下からはヨハナーンがヘロディアスを非難する声が聞こえてくるが、気にする妻を尻目にヘロデ王はその声に耳を傾けない。
それどころかヘロデ王の目は常にサロメに注がれ、サロメに踊ってみせよと命じる。
サロメは始めは断っていたが、ヘロデ王に踊りをみせれば望みのものをやろうと言われ、サロメは「七つのヴェールの踊り」を披露する。
満足したヘロデ王が望みは何だと尋ねると、サロメは望みを告げる。
『銀の皿に――
銀の皿に、預言者ヨハナーンの首を――』
その言葉に喜ぶ母ヘロディアス。
それに対し聖者を殺すことを恐れたヘロデ王はやめさせようと説得するが、サロメは頑として譲らない。
結局サロメの望みが叶う。
『ああ、ヨハナーンや。なぜお前は私の顔を見てくれなかったの。
ようもお前は、自分の神を見ようと思っているものの目隠の巾でお前の目を隠したね。
ヨハナーンや。成程お前は、神をば見ていただろう。
そのくせ私を、私をちっとも見なかったのね。
もし私を見たなら、きっと私を愛してくれたに違いない。
お前の美しさが慕わしい。
私はお前の体が欲しい。
私の渇きは酒では止まらぬ。
私の飢は林檎では直らぬ。
ヨハナーンや。まあ、私はどうしたらよかろうね。
川の水でも海の水でも、
私の胸の火は消えぬ。
ああ、なぜお前は私の顔を見なかったのだ。
少しでも見てさえくれたなら、私を愛してくれたろうに。
きっと私を愛したに違いない。
死の秘密より大きいのが、
愛の秘密であるではないか』
銀の皿の上にのせられたヨハナーンの首を持ち上げ、口づけをするサロメ。