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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第79章
嬉しそうにそうおねだりする妹に、匠海はごつんと頭突きした。
「無茶言うな。俺、忙しいんだぞ?」
「いたたっ ……そうか~。お誕生日に間に合わなくても、帰国してからでも、全然いいんだけど……」
そう食い下がった妹のボタンを留め終わり、匠海はライトグレーのサロペットのミニワンピをひょいひょいと着せ付けた。
「う~ん。無理」
「そっか……、残念」
兄の否定の返事に、ヴィヴィはしゅんとするが、こればかりはしょうがない。
「他に欲しいもの、考えておきなさい。どれだけ高くても、手に入れるのが難しくても頑張るから」
落ち込む妹を見兼ねてか、そう優しくフォローしてくれた匠海に、ヴィヴィは「う~~ん」と唸りながら小さな胸の前で両腕を組む。
「………………、じゃあ、小惑星とか?」
(ヴィクトリア星人1号? ……うししっ)
心の中でそう一人で楽しんで、ほくそ笑んでいだヴィヴィに、
「う~~ん。数年くれるか?」
そう匠海に真顔で返され、ヴィヴィは頭を抱えた。
「えっと、冗談です……」
「分かってるよ」
兄の切り返しに笑ったヴィヴィは、匠海の顔を覗き込む。
「ねえ、お兄ちゃんは? 誕生日プレゼント、何がいい?」
(当日は絶対に会えないだろうから、ヴィヴィ、郵送で送るつもりなんだけど……)
無欲そうな兄の事だから、多分うんうん悩まれるんだろうなと高を括っていたヴィヴィの目の前、人差し指が突き付けられた。
(……ん……?)
「ヴィクトリア」
そう即答した匠海に、ヴィヴィは呆気に取られ、やがて唇を尖らせた。
「もうっ! ヴィヴィは “お兄ちゃんのもの” 以外の何物でもないと思うけれどっ?」
(これ以上、どうしろと……)
何故かふんぞり返って腰に両手を添えながら兄を見上げたヴィヴィに、匠海は真顔で返してきた。
「そうか? ヴィクトリアに会いたいと思う時に会えないし、抱きたいと思う時に抱けないのに?」
「………………っ」
そのまさかの返しに、ヴィヴィは硬直して瞳を見開いた。
(……え、……そんな……、だって……)
ヴィヴィは胸の中で言い訳をするが、それを口にはする事は出来なかった。