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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第79章
二人は10秒ほどそのまま見詰め合っていたが、やがて兄のほうからその沈黙を破った。
「うそ、冗談だよ……。固まらないでくれ。ちょっとこの2ヶ月、寂し過ぎてな……」
眉尻を下げながらヴィヴィの頬を撫でてきた兄に、ヴィヴィは驚く。
(ど、どれだけ寂しかったの……? もしかして、ヴィヴィなんかより、ずっとお兄ちゃんのほうが、この2ヶ月寂しかったの?)
しかしよくよく考えればそうかもしれない。
自分の周りには両親もクリスもいるし、朝比奈をはじめ篠宮邸の皆もいる。
学校に行けば幼馴染 兼 クラスメイトにも会えるし、自分は今までと全く変わりない生活をしている。
しかし、匠海は違う。
兄は何もかもヴィヴィとは正反対の生活を送っているのだ。
そしてその結果、こんな出来損ないの妹でさえ、傍にいて欲しいと願ってくれたのだろう。
「……さ、寂しがり屋のお兄ちゃん……、か、可愛い……っ」
「萌え~っ」と心の中でぽそりと呟いて、はにかんで兄を見上げれば、
「……五月蠅い」
と匠海は一蹴した。
そんなつれない兄には目もくれず、ヴィヴィは名案を思い付き瞳を輝かせた。
「じゃあ、お兄ちゃんへの誕生日プレゼントは、今ここで決定しましたっ!!」
あまりにも楽しそうな表情を浮かべる妹に興味を惹かれたのか、匠海が「何?」と先を促してくる。
「ヴィヴィの全身写真をプリントした、抱き枕!!」
(きゃ~っ! 超名案!! っていうか、そのお兄ちゃんバージョンを、ヴィヴィが欲しいのっ)
ヴィヴィはそう言って一人でにやにやしていたが、当の本人はヴィヴィの頬に添えていた手で白い頬を抓った。
「アホ……いりません、そんなの」
「本物のヴィヴィより、ボンキュッボンにしといてあげるよ?」
自分の小さな胸の前で、両手でそのボン加減を説明するヴィヴィに、匠海は嘆息してみせる。
「遠慮しときます」
「え~~? 『お兄ちゃん、大好き!』って言う、音声機能搭載しておくよ?」
(他にも「おはよう!」とか、「おやすみ!」とか、「いい夢見ろよ!」とか、「あばよっ!」とか……?)
そう言って匠海の白いバスローブの襟に縋り付けば、鼻で笑われた。
「結構です」