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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章            

 ホテルの匠海の部屋から戻ったヴィヴィは、親族達と朝食を取った後、昨日まで世界選手権が行われていたアストン・ヴィラ・アイスセンターへと移動した。

 エキシビションの準備を行うかたわら、日英両国のメディア対応も熟す。

 受験生である双子は、最低限のメディア露出しか出来ないと、取材規制をお願いしている。

 よって、特にこの世界フィギュアが今シーズンの最終戦であったヴィヴィは、以降メディアに出る事は無いので、ここぞとばかりに取材陣が殺到した。

 大会の放映権を持っているフジテレビ以外の局の取材は、アイスセンターの外で行ったヴィヴィは、付き添ってくれた牧野マネージャーとリンクへと戻った。

「ま、これでしばらくは、勉強とスケートに集中出来るな? おつかれさん」

 牧野の労いの言葉に、ヴィヴィは微笑む。

「はい。クリスはまだ国別対抗戦あって、ヴィヴィだけ申し訳ないですけどね」

 そう言って肩を竦めたヴィヴィに、牧野が笑う。

「はは。まあ、クリスはもの凄く器用だから」

「確かに。ところで、牧野マネージャー。昨日、かなりお酒飲みました?」

 ヴィヴィは並んで廊下を歩く、牧野の顔を覗き込む。

「え? あ、やべ、酒臭い?」

 口元に手をかざした牧野に、ヴィヴィはにやりとした。

「酒臭いというより、お酒の匂いがします」

「君達のご両親に呼び出されて、朝方まで飲んでたんだよ~」

 げっそりした表情でそう釈明する牧野に、ヴィヴィは「ああ、あの両家のディナーパーティーの後に、参加したんだ」と納得する。

「じゃあ、ブリティッシュ(英国の)・パブ、行ったんですか?」

「ああ。君らの親族、みんなザル過ぎるだろう。死ぬかと思った……」

 確かに牧野の言う通り、両家の親族は皆、物凄く酒が強い。

「す、すみません……。うちの親族がご迷惑をっ」

「ふ。いいよ。双子の幼少期からのオモシロ話も、いっぱい聞けたし」

 そう牧野がにやりと嗤いながら言えば、ヴィヴィが灰色の瞳を見開く。

「えっ!? 何言ったんですか、うちの親戚陣は!」

(特にダニー叔父さん! お酒入ると、ある事ない事言うからっ!)

「ふっ ふっ ふっ 秘密~」

 面白がって教えてくれない牧野に、ヴィヴィは「え~~っ」と不満の声を上げる。

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