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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
しかし廊下の先、関係者の控室等がある入り口に立っていたクリスを見つけ、ヴィヴィは手を振った。
「ヴィヴィ、ランチ……」
ヴィヴィより先に取材を受けていたクリスはそう呟くと、関係者の為に用意されたケータリングを指さす。
広い控室に、パスタや煮込み料理の美味しそうな香りが満ちていた。
「あ、クリス。もう食べた~?」
クリスの目の前まで辿り着いたヴィヴィが、そう尋ねながら双子の兄を見上げると、
「ううん。ヴィヴィ、待ってた……」
そんな可愛い返事と共に、クリスに頭を撫でられた。
「うそっ や~ん、クリス好きっ ありがとう!」
ぴょんとクリスに飛びついたヴィヴィを見て、牧野マネージャーが笑う。
「じゃあ、二人とも。12:30からフィナーレのリハーサル、13:20からスポンサーのコーセーが用意してくれたスタイリストが、スタイリングしてくれるから、遅れないようにね」
そう言い置いてランチを取らずにどこかへ行ってしまうらしい牧野の背中に、双子は「「は~~い」」と返事して別れた。
「クリス、何にする?」
ずらりと並んだケータリングの料理に、ヴィヴィは瞳を輝かしながら隣のクリスに尋ねる。
「ん……、スコッチエッグ、ミートパイと、サラダかな……」
「ヴィヴィ、シェパーズパイとサラダにしよう」
数ある英国料理の中から、シェパーズパイ(マッシュポテトのパイ皮で牛肉を包んだミートパイ)と、グリーンサラダをよそったヴィヴィは、クリスと近くのテーブルへと着いた。
カナダのアイス・ダンサー、テッサ・バーチャーとスコット・モアイが近くにいることに気づき、ヴィヴィはクリスの肩を指先でトントンと叩く。
「ん? ああ……」
気付いたクリスが、ヴィヴィの後を着いていく。
「テッサ、スコット。金メダル、おめでとう!」
ヴィヴィがそう笑顔で二人にお祝いを述べると、
「おめでとうございます」
とクリスが続く。
「あら、ありがとう! ヴィヴィ、クリス」
黒髪美人のテッサが立ち上がって、双子に飛びつくようにハグをくれれば、
「君達も、世界選手権2連覇、おめでとう!」
とこちらも黒髪イケメンのスコットが優しいハグをくれた。