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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
「あ、良ければ一緒に食べましょうよ。私達もさっき、来たばかりなの」
テッサが綺麗な微笑でそう誘ってくれ、美しいものに目がないヴィヴィは瞳を♡マークにし、「はいぃっ ぜひともっ!」と同席した。
何せこのカナダ人アイス・ダンスペアは日本でも人気で、日本のトヨタのCMにも出演しているくらいなのだ。
「あ、スコット、ヴィヴィと同じシェパーズパイだね?」
ヴィヴィがスコットの皿を見ると、
「ああ、うちの田舎の料理と似てて、懐かしいんだ」
とスコットが自分の田舎料理について説明してくれる。
それをふんふん聴いていると、誰かに後ろから抱きつかれた。
「うぇっ!?」
驚いて変な声を出してしまったヴィヴィを見たカナダペアは、その抱きついた当人を見て苦笑した。
「ああ、ごめんなさいね、ヴィヴィ。うちのコーチが」
そう言ってヴィヴィを後ろから羽交い絞めしている彼らのコーチに、「やめてあげて」と言ってくれたテッサに礼を言い、ヴィヴィは後ろを振り向く。
「HI! ヴィヴィ&クリス。金メダルおめでとう!」
50代の黒髪の女性は、ヴィヴィとクリスを交互にぺしぺし叩きながら健闘を称えてくれる。
「あ、ズエワコーチ! あ、ありがとうございます」と、ヴィヴィ。
「ありがとうございます。今期のFD、好きでした……」と、クリス。
それぞれ挨拶し、ズエワコーチを加えてランチを食べる事になった。
「クリスはFDを気に入ってくれたの? 嬉しいな」
スコットが太めの眉を下げ、喜んでクリスを見返す。
「うん。ロミオ&ジュリエット、コーチの世界観がとても出てて、素敵だった……」
クリスの褒め言葉に、ズエワコーチが「あら、嬉しいわ!」と微笑む。
マリ-ナ・ズエワ――彼女はコーチ業だけではなく、各選手の振り付けもしているのだ。
「ヴィヴィは、SDのタンゴ! もう、めちゃくちゃカッコ良かった!! ヴィヴィもいつかやるんだ、タンゴ!」
彼らのキレッキレのスパニッシュ・タンゴを思い出し、胸の前で手を組んでうっとりしたヴィヴィに、ズエワコーチが突っ込む。
「う~ん、ヴィヴィにはまだ、早いんじゃないかしら?」