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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
「え~、写真撮るから、やってよ~!」
そう言って、スマホやカメラを向けてくる従兄弟に、クリスは「え~~……」と小さく呻った。
陸上では出来ないのにやれと言われたクリスは、大人しくロビーの床で同じ体勢をとり……結果、カーペットの上にごろんと尻餅をついた。
「あははっ カッコわるっ!!」
「動画で撮ってやった。学校のみんなに見せてやろう~」
そう口々に囃し立てる従兄弟に、
「だから、氷の上じゃないと……まあ、いいや……」
肩を竦めたクリスは早々に白旗を上げた。
床に座ったままのクリスに、笑いながら手を差し伸べたヴィヴィに、今度は白羽の矢が当たる。
「あっ ヴィヴィ、アリス滑ってバックヤード戻る時、こけそうになったでしょ?」
父方の従姉のメグにそう突っ込まれ、ヴィヴィは驚く。
「えっ 暗転してたのに、見えてたの?」
もう『不思議の国のアリス』を滑る事は無いんだろうなと思い、本番で全力を出し切ったヴィヴィは、ちょっと張り切りすぎて終った頃にはふらふらし、リンクから降りる時に段差に引っかかったのだ。
近くにいた係員が手を差し伸べてくれたので、こけはしなかったけれど。
「うん。半数くらいの観客は気付いてたよ。暗闇に目が慣れてたし。で、みんなヴィヴィが引っ込んだ後、くすくす笑ってた」
そう説明して思い出し笑いしたメグに、ヴィヴィはがくりと肩を落とす。
「あ゛あぁ~~……っ 最後だから完璧に滑りたかったのに……っ」
「ヴィヴィっ 超可愛かったよ、アリスっ!!」
高い声でそう言って救いの手を差し伸べてくれたのは、母方の従姉妹サラの弟、ジム。
くりくりの瞳を輝かせて自分を見上げてくるジムを、ヴィヴィはしゃがんでひしと胸に抱きしめた。
「ああ、可愛いっ! もうこの親族達の中で、ジムだけが心のオアシスよっ!」
「ヴィヴィったら、『僕に白ウサギの縫いぐるみ、ちょうだいっ!』って叫んで手を振ったのに、気づいてくれないんだもん。キライっ!」
そう言って自分の腕の中でぷいと可愛らしく顔を背けたジムに、ヴィヴィは平謝りする。