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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
その後、今日帰宅する親族と、父グレコリーにお礼とお別れをし、見送った双子は、部屋に戻って衣装の洗濯・シューズ磨き・シャワーを終え、残りの親族が開いた夕食会に参加した。
「あら、素敵なドレスだこと!」
ワインレッドのワンピースを纏ったヴィヴィを認めた叔母が、頬を綻ばす。
「あ、うん。この後、クロージングバンケットがあるから、その格好で来ちゃった」
20:30~22:30までこのホテルの最上階で、ISU主催のバンケットがある。
あと1時間位で始まってしまうのだが、それまでは親戚と一緒に過ごしたくてここに参加したのだ。
グレーのスーツに着替えたクリスも参加し、大人席と子供席に分かれて、ワイワイとテーブルを囲んでいた。
双子はこの後のバンケットのために、食事を我慢していたのに、母ジュリアンはもう飲み始めている。
それを恨めしそうに睨みながら、ヴィヴィは女子グループの中で、恋バナに花を咲かせていた。
「やっぱ、男は顔っしょ!」
「ちが~うっ 男は経済力! 金よ金っ」
「え~っ 筋肉でしょ。身体が資本よ身体がっ」
恋バナというほど具体的でもなく、かと言ってなんだか妙に現実を見過ぎな女子達は、きゃいきゃい持論を展開する。
「じゃあ、心は……? 内面とか、性格とか」
ヴィヴィがそう口を挟むと、皆の表情が緩む。
「え~、私はやっぱり頼りがいのある、しっかりした大人の男かなあ?」
「頭が良くてぇ~、精神的に安定しててぇ~、私だけに優しくてぇ~」
「ずばり、浮気しない男!」
皆が口ぐちに挙げる理想の男像に、ヴィヴィは「ふ~ん」と納得する。
「ヴィヴィはどうせ、あれでしょう? 優しい優しい、匠海みたいなお・と・こ!」
そうサラが、隣に座っているヴィヴィを肘で小突けば、ヴィヴィは首を傾げる。
「別に、ヴィヴィは特には……。あ……っ」
そこまで言って何か思いついた風な表情をしたヴィヴィに、皆が注目する。
「何~?」
サラのその問いに、ヴィヴィは胸の前で拳を作って力説した。
「信頼、出来る人……、うん、それに尽きるっ!」
(そこがしっかりしてないと、頑張れませんっ)