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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
「あ~、そだねえ、最低限、そこはねえ~」
「ね、一番大事なことかもね」
「うんうん、ヴィヴィにしては、深いこと言った」
従姉妹たちのその返事に、ヴィヴィは「むぅ」と唸る。
(ヴィヴィにしてはって、何さ……っ)
そのヴィヴィの肩がポンと叩かれて振り向くと、クリスが立っていた。
「ヴィヴィ、そろそろ、バンケット行かなきゃ……」
ヴィヴィは腕時計を見ると、頷いて立ち上がった。
「マム! そろそろ」
離れた席の母ジュリアンにそう声をかけると、母が代表して、ここ数日の皆の応援へのお礼と、また夏の再会を誓ってその場を後にした。
「ま、て言っても、明日また、バーミンガム空港で会いそうだけどね?」
お店から出たジュリアンはそう言って笑っていたが、その視線の先に匠海がいることに気づいて声をかけた。
「あら、匠海~! コート着て、どこか行くの?」
漆黒のダッフルコートを纏った匠海は、近づいてくる母と弟妹に気づき振り返る。
「ああ、こっちにいる大学の友人と、ちょっと呑んでくる」
「そう。あ、明日も朝食、一緒に食べましょうね?」
匠海のコートのフードの形を整えながらそう念押しするジュリアンに、兄は苦笑する。
「うん。8時?」
「ええ。じゃあ、寒いから気を付けてね」
そのジュリアンの挨拶に、
「いってらっしゃい、お兄ちゃん」
「らっしゃい……」
と双子が続けた。
階下へと行くエレベーターに乗った匠海と別れた3人は、最上階のバンケット会場へと向かった。
「あ、ヴィヴィ、先にパウダールーム行ってくる」
そう2人に断ってパウダールームに入ると、シルバーのリボンを象ったクラッチバックの中、スマートフォンが振動した。
「ん……?」
ヴィヴィは鏡の前でバックを開けると、メールが1件届いていた。
その相手の名前に、ヴィヴィの顔が綻ぶ。
『バンケット後に部屋に来て、俺がまだ帰ってなかったら、カードキー使って中で待ってて』
匠海からの、要件を伝えるだけの短いメール。
ヴィヴィはクラッチバックの中、2枚あるカードキーを確認すると、微笑む。
『うん。お友達にヨロシクね? 飲みすぎないように~(^-^)/』
そう返信した直後、
『お前もな』
と兄からの返信。