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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
『ヴィヴィはお酒、飲みませんっ!!』
そう当たり前の事を返すと、もう返事は帰って来なかった。
用を済まし、パウダールームを後にしたヴィヴィが、ホールに入ろうとした時、またメールが来た。
「……うふふ」
内容を確認したヴィヴィの頬が、ピンク色に染まる。
『ワンピース、似合ってたよ。けれど、あんまり肩は出さないように』
ワインレッドのノースリーブのワンピース。
ウエスト部分にシルバーのスパンコールのベルトが付き、全体的に細かいタックが詰めてあるシフォンのそれを見下ろし、ヴィヴィははにかむ。
そして言われた通り、キャメルのストールを肩に巻きなおしたヴィヴィは、『うん、気を付けるね♡』と返信し、バンケット会場へと入っていった、
「じゃあねんっ また、来シーズンに!」
「うんっ あ、写真、メールする! TwitterにもUPする!」
「俺らは、来月の国別でまた会えるな~」
「そだね~。あっ 国別対抗戦の応援グッズ、各自用意してくるように!」
バンケットホールの出口近く、各国のスケーターが英語、フランス語、ロシア語等入り乱れて、再会の約束を誓い合う。
ヴィヴィとクリスも、記念品やらスポンサーからの贈答品やらが入ったパンパンの紙袋を手に、それぞれとお別れの挨拶を交わした。
他のコーチ陣とまたパブへ繰り出すらしい母ジュリアンはほっぽいて、双子は部屋へと戻る事にした。
「ヴィヴィ、送る……」
クリスがそう言って、エレベーターに乗り込むヴィヴィの腰に手を添え、自分も乗り込む。
「ん。ありがとう」
並んで立ったヴィヴィの手をぎゅっと握ったクリスは、部屋の階数を押すと口を開いた。
「帰国したら、勉強するからね……」
「うんっ 結局、英国じゃ殆ど出来なかったもんね。巻き返さなきゃっ」
繋いでいないほうの手で、紙袋を下げながら拳を作ったヴィヴィは、そう意気込んでクリスを見上げる。
また今月も模試があり、受験生に休みは無い。
「一緒に、頑張ろう……。早く、日本、帰りたいな……」
クリスのその呟きに、ヴィヴィも強く頷いてみせる。
「ヴィヴィも……。お~さ~し~み~っ!」
大会期間中は食中毒が恐ろしくて、極力生ものは口にしない。
色気より食い気全開な妹に、クリスはふっと息だけで苦笑した。