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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章
長い廊下を抜け辿り着いた部屋の前、ヴィヴィは誰も近くにいないことを確認すると、大きく息を吸い込み瞼を閉じる。
そして深く息を吐き出すと、ゆっくりと瞼を上げた。
カードキーを使って扉を開けると、案の定、室内には明かりが灯っていた。
短い廊下を抜け、リビングへと通じる扉を開く。
広い室内の中央、据え置かれた対面式のソファーに、匠海が腰を下ろしていた。
その手に握られていたのは、琥珀色の液体に充たされたバカラのグラス。
ちらりと腕時計に目を落とした匠海が、こちらに視線を投げて寄越す。
「遅い」と言われるかと思ったが、兄は何も言って来なかった。
ヴィヴィは絨毯敷きの床を静かに進むと、兄のすぐ傍に立った。
逞しく引き締まった体躯に薄手のニットを纏った匠海は、こんな時でもそこはかとない色香を醸し出していた。
そして、兄の近くに寄って気づいたことがあった。
だいぶアルコールを口にしたらしい兄からは、お酒の香りがした。
ヴィヴィは白いコートの袖口を握ると、恐るおそる口を開く。
「お兄ちゃん……。ヴィヴィ、あの、は、話があるの」
そう発した声はしっかりとしていたが、少し語尾が震えていた。
いつもと違う硬い表情をした妹をソファーから見上げた兄は、眉を潜めた。
「話……? 連絡も無しにこんなに待たせておいて、話だと?」
「ごめんなさい。す、すぐに……、あの、なるべく早く済ませるから」
ヴィヴィはそう懇願したが、匠海は全く聞く耳を持たなかった。
「お前が言ったんだろう? 明日は帰国するだけだから、俺が満足するまでしていいって。話の前に、先にやらせろ」
そう言って立ち上がった匠海から、ヴィヴィは後ずさりする。
(そ、んな……、お兄ちゃんが満足するまで抱かれた後なんて、話、出来る筈ない……)
「お、お兄ちゃん、待って……っ あっ やぁっ」
両腕を伸ばしてくる匠海にヴィヴィも必死に抵抗したが、体格差のあるヴィヴィが勝てる筈もなく、あっさりと捕まった。