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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第80章            

(そんなこと、心の底で思って、頭の中で考えてたんだ……。

 ヴィヴィがお兄ちゃんの事を「大好き」と笑って言っていた時も、

 お兄ちゃんを受け入れて身も心も蕩けて喜んでいた時も、

 ずっと、ずっとお兄ちゃんは、

 「俺は “禁断の蜜の味” を味わっている」って、

 「 “近親相姦だから” 気持ちいい」って――)

 ヴィヴィの灰色の瞳が大きく見開かれる。

「―――っ ぅうっ!?」

 胃からせり上がってくるものを感じ、咄嗟に両手で口を押えると、バスルームに駆け込んだ。

 トイレに屈み込んで何度も上がって来るものを吐きだすのに、一向に吐き気が止まらない。

 苦しい。

 痛い。

 辛い。

 胃が、

 食道が、

 咽喉が、

 胸が――。

 苦い胃液を吐き続け、その瞳から滂沱の涙を零し続けていたヴィヴィは、かっと目を見開いた。

「……――っ!!」

 胸の下のみぞおちが、ぐうと押し込まれるように苦しく、ヴィヴィは息も絶え絶えにバスルームの床に倒れこむ。

 タイルの上で咽喉を掻き毟るヴィヴィは、身を捩ってのた打ち回る。

(くるしい……っ 息っ 出来、ないっ

 たすけて……っ 誰かっ だれか、助けてっ!

 ……お兄ちゃん――っ)

 一番苦しい時にその原因を与えた兄に助けを求めたヴィヴィは、その霞む意識の中で(もう、本当に馬鹿……)と心の中で自分を罵り、そして完全に意識を失った。










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