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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

「……マム、ヴィヴィ、寝るから……。朝食、食べてきて……?」

「本当に、大丈夫?」

 まだ心配そうな母に、ヴィヴィは頷き瞼を閉じた。

「うん……。おやすみ、なさい……」

 途中、水分補給をしながら1時間寝たヴィヴィは、意外にも元気になっていた。

 ジュリアンに手伝ってもらって荷造りしたヴィヴィの所に、クリスも駆け付けてくれた。

「ヴィヴィ、大丈夫……?」

 バーミンガム空港へと向かうリムジンの中、隣に座ったクリスが、心配そうにヴィヴィを見つめてくる。

「全然。でも、肩貸してね?」

 ヴィヴィはそう言って、クリスの肩に頭を預けた。

「いくらでもどうぞ。っていうか、膝枕してあげる……」

 ヴィヴィの頭を支えて自分の膝へと導いたクリスは、妹の足も広いシートに乗せて、その身を横たえさせた。

「ふふ。たまにはいいね、逆も……」

 瞳を細めて見上げてくるヴィヴィの髪を、クリスは優しく撫でて自分も瞳を細める。

「うん。寝てるといい……。近いから、すぐ着くけど……」

 そのクリスの言葉を聞きながら、ヴィヴィは既に眠りに落ちていた。

 空港に着いた3人は、すぐさま航空会社のラウンジへ移動し、そこで出国審査等を済ませた。

 試合に同行していた牧野マネージャーと柿田トレーナーは、昨日の便で先に帰国していた。

「ヴィヴィ、具合はどう?」

 ソファーに深く凭れ掛かり、ブランケットを掛けたヴィヴィの顔を、ジュリアンが覗き込んでくる。

「ん。大丈夫。ごめんね、心配かけて……」

 娘のそのしっかりした口調に、母はほっと胸を撫で下ろして続けた。

「隣の航空会社のラウンジに、グレコリーのお兄様家族がいるらしいから、私、ご挨拶してくるわ」

「うん。宜しく伝えておいて?」

 自分も行きたかったが、叔父達に心配を掛けるだけのような気もして、ヴィヴィはそうお願いする。

「ええ。クリス、お願いね?」

「うん、任せて……」

 クリスはそう答えると、ヴィヴィを見つめる。

「また、膝枕しようか……?」

 ヴィヴィは小さく頭を振ると微笑する。

「ううん……。さすがに、人の目があるところでは恥ずかしい……」

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