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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第16章
男子は世界選手権二位の羽生(はぶ)結弦(24)と、六位の火野龍樹(24)をポイント数で上回った、世界ジュニア一位のクリス(14)の二人。
女子は世界選手権三位の宮平知子(20)と、グランプリファイナル三位の村下佳菜子(24)をポイント数で上回った、世界ジュニア一位のヴィヴィ(14)の二人。
ペアは棚橋成美(26)とカナダと日本の国籍を持つマーヴィン藤堂(28)が、アイスダンスはアメリカと日本国籍を持ったアルフレッド渋谷(22)とマリア渋谷(18)の兄妹が出場している。
日本チームは一日目、アイスダンスのSD(ショートダンス)は四位、男子SPは羽生が二位、クリスが一位、女子SPは宮平が三位、ヴィヴィが一位という結果で終え。
二日目の今日、ペアのSPは三位、アイスダンスのFD(フリーダンス)は三位、男子FSはクリスが一位と着けていた。
四回転トゥーループを完璧に降りた羽生に観客から大きな歓声が上がる。
ただ続いての四回転サルコウがパンクして二回転になってしまった。
しかしその後はさすが十七歳からエースとして日本フィギュアを支えてきただけあり、落ち着いて手堅く纏めてきた。
リンクに礼をして戻ってきた羽生を迎えに、ヴィヴィ達はキスアンドクライへと出ていく。
国別対抗戦は団体戦なので、皆で同じ国の選手を応援しあうのだ。
ブライアン・オーチャーコーチに「あっぱれ」と書かれた扇子を渡したアルフレッド渋谷が、その後ろで自身もちょんまげのカツラを被って奇妙な踊りをしている。
「それ、何踊り?」
尋ねたヴィヴィに妹のマリアが「盆踊りよ。こうするの」と何やら地面をスコップで掘るような動作を繰り返す。
ヴィヴィとクリスが真似て踊っていると、四回転サルコウを失敗して顔を曇らせていた羽生が噴き出した。
「あは! 真顔で盆踊り踊るなよ、クリス!」
頭にひょっとこのお面を付けて真顔で炭坑節を踊るクリスが大画面スクリーンに映し出され、場内が爆笑に包まれる。
そんなことをしていると採点が終了し、モニターに表示される。
「羽生結弦選手の得点――177.12点、総合得点264.29点。現在の順位は第二位です」
その得点に、羽生はほっとした表情を見せた。
その途端にムードメーカーの棚橋成美が、小さな体でジャンプして喜びを表現する。