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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第16章                 

「ワオ! 日本男子が一位二位独占だよっ!」

「お疲れ~!」

「メダル、見えてきたね!」

「明日が最後か! 気合い入れて応援するよ! 応援グッズ、再調達してこよ~」

 口々に健闘を讃(たた)え合い、、試合は三日目の明日――ペアのFSと女子のFSへと託されることとなった。

 皆で連れ立って控室へと戻ろうとした時、「ヴィヴィ」と誰かに呼び止められた。

 振り向くとヴィヴィのすぐ後ろに、関係者のPASSを首から下げた振付師の宮田先生が立っていた。

「わ! 先生、見に来られてたんですか?」

 数か月ぶりに対面した宮田にヴィヴィが驚いて向き直る。

「ああ、今日はフランスの男子に用事があってね。昨日も来てたからヴィヴィとクリスのSPも見たよ」

 宮田は日本選手のみならず、海外の選手からも引っ張りだこだった。

 それもこれも二〇一四年のソチオリンピックで高畑大輔の名プログラムがきっかけで、売れっ子になったのだった。

「今シーズンのSPは昨日で滑り収めだったんですけれど……ぶ、ぶっちゃけ、先生の振付けて下さった『剣の舞』……どうでしたかっ?」

 ヴィヴィは覚悟を決めて宮田に尋ねる。

 というのも去年のシーズンイン直前に宮田にこっぴどく駄目出しされてから、ヴィヴィはバレエ「ガイーヌ」を何度も見直し。

 モダンバレエのDVDを取り寄せて動きを研究したりと、彼女なりに「剣の舞」を自分のものにしようと必死に努力し続けていたのだ。

「うん、正直驚いてるよ。昨日の時点で僕が求めている物のもう一歩先を行ってた。勇敢な剣士の舞は極限まで体を大きく使っていて、とても力強く動けているのは体幹を鍛えたおかげだろうね。

 それにガイーヌの踊りは民族舞踊独特の味が感じられた。目線の動きも良かった。あれで皆にヴィヴィが見せたいものがより伝わったと思う」

「…………よかったぁ…………」

 宮田の率直な感想に、ヴィヴィは心底ほっとしたようにそう零すと胸に両手を当てた。

 ヴィヴィのその様子からどれほど振付師の感想を気にしていたかを察した宮田が、ヴィヴィの小さな頭をポンポンと叩いて苦労を労(ねぎら)ってくれた。

「ところで、来シーズンのことなんだけど……ジュリアンコーチからSPの振り付けをお願いされてね」

「あ、はい。私も聞いています」

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