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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

「え、もう疲れちゃったのか? しょうがないなあ。じゃあ、夏休みの宿題する?」

 そう提案してきた匠海に、ヴィヴィは、

「えっ!? や~だ~っ」

と駄々を捏ねる。

「じゃあ、僕を捕まえてごらん?」

「うん。待て~!」

 今度はゆっくり逃げてくれる匠海を、ヴィヴィは2分ほど追い掛け回した挙句、最後は飛び掛かって捕まえた。

「あはは、捕まった~っ」

 ヴィヴィを抱き留めてごろりと芝生に寝転がった匠海は、はあはあと胸を喘がせそう叫んだ。

「捕まえた~っ!!」

 ヴィヴィはもう離すもんかと必死に匠海にしがみ付くと、嬉しそうにはしゃぐ。

 しばらく二人とも息が切れて苦しくて、そのまま芝生の上に寝転んでいた。

 その兄の胸の上、ヴィヴィがうつ伏せたまま、匠海を見下ろす。

「お兄ちゃん、好き~っ」

「ん?」

 そう聞き返した匠海の黒髪が、芝生の上を走ってきた風に煽られ、さらさらとなびく。

「うふふ。お兄ちゃんの瞳、優しいの。ヴィヴィ、だぁいすきっ」

 無邪気にそう言って「にしし」と白い歯を見せて笑ったヴィヴィに、匠海は一瞬呆気に取られたのち、破顔した。

「あはは、ありがとう」

 そう言って妹を胸に抱きしめた匠海に、ヴィヴィは「うんっ」と元気に頷いた。

「ヴィヴィ~! 匠海~!」

 遠くから兄妹を呼ぶ可愛らしい声が届き、ヴィヴィは兄の上で目を凝らす。

「あ、サラだ。クリス達もいる~」

 5名くらいの年の近い従兄妹達が、こっちに向かって手を振っている。

「隠れんぼ、しよ~!」

 サラのその誘いに、ヴィヴィは「い~よ~」と明るい声で叫んだ。

「じゃあ、匠海が鬼ね? ヴィヴィ、100数える前に隠れるんだよ~!」

 サラのその提案にヴィヴィは「は~い」と答え、匠海は妹を胸に乗せたまま肩を竦めた。

「え、僕が鬼かよ……。しょうがないなぁ。いくよ~? 1,2,3……」

 年下の従姉妹に振り回されることの多い匠海は、それでもしぶしぶ目を閉じて数え始める。

「お、お兄ちゃん?」

 ヴィヴィが焦って、兄を止める。

「ん?」

「はなしてぇ?」

 匠海の腕が自分にしっかり巻き付いていて、ヴィヴィは逃げられないと主張する。

「どうして?」

 兄は閉じていた瞼を上げ不思議そうに、胸の上で戸惑っている妹を見上げる。

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