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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

「隠れんぼ、でしょう?」

 そのヴィヴィの確認に、匠海はにやりと嗤う。

「うん。だから、ヴィヴィはもう捕まえた~」

「えぇ~っ!?」

 自分も隠れたかったヴィヴィが、そう不満げに喚く。

 それを面白そうに見つめていた兄は、ゆっくりと上半身を起こすと、妹の体を解放した。

「ふ。嘘だよ。ほら、上手に隠れておいで」

 腰の上に跨ったヴィヴィの金色の頭を撫でた匠海に、ヴィヴィがにっこりと笑う。

「うん! 早くヴィヴィの事、見つけてね?」

 そう可愛らしくおねだりしたヴィヴィは、匠海の頬にチュッとキスすると、脱兎の如く逃げて行った。

「早く見つけて、いいのか……?」

 妹にキスされたほうの頬をぽりぽりと指先で掻いた匠海は、そう疑問を口にしたが、やがてまた100まで数え始めた。

 兄の元から転げるように逃げて庭の隅に隠れたヴィヴィは、大きな木の陰にピンク色のスカートが覗いているのに気付く。

 抜き足差し足後ろから近づき、

「わっ!!」

「きゃぁっ!? ……なんだ、ヴィヴィかあ! 驚かさないでようっ」

 ヴィヴィの大きな声に飛び上がった従姉妹のサラは、余程驚いたのか、小さな手を胸の前に当てていた。

「えへへ。一緒に隠れよう?」

 悪びれもせず笑うヴィヴィに、サラは噴き出して了承した。

 広大な庭の木々の陰に隠れた小さな二人は、それから数分、こそこそとジャンケンしたり、しりとりをしたりと見つけられるまでの時間を潰していた。

 なんせこの屋敷は広すぎるので、探し回る鬼も隠れる方も一苦労なのだ。

「むかで、の“で”っ!」

とヴィヴィが呟けば、

「“で”~~? え~と、でんでんむし……の“し”!」

とサラがしりとりを続ける。

「“し”~……。お兄ちゃん、遅いなぁ……」

 ヴィヴィはしりとりを勝手に放棄し、そう寂しそうに呟いた。

(早く見つけてね? って言ったのにぃ……)

「ねえねえ、ヴィヴィ?」

「ん? なあに、サラ?」

「前から気になってたんだけどね? ヴィヴィはどうして、匠海のことを日本語の『お兄ちゃん』って呼ぶのぉ?」

「え~?」

 従姉妹の質問の意味が分からず、ヴィヴィは首を傾げる。

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