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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

「ヴィヴィのBrother(兄弟)だから『お兄ちゃん』って呼ぶだけだよ?」

「イギリスでは兄弟姉妹のことを、そういう“名詞”では呼ばないよ? みんな“名前”で呼び合うの」

 サラのその指摘に、ヴィヴィは小さな顎に指を添えて斜め上を見つめる。

「あ~。そう言われてみれば、確かに……」

 母の弟の子供達――兄のジョンの事を、その妹のメリッサは「ジョン」と呼んでいる。

「じゃあ、ヴィヴィはやっぱり『お兄ちゃん』って呼び続けることにする!」

 小さな顔ににっこりと満面の笑みを浮かべたヴィヴィは、嬉しそうにそう呟く。

「え? どうして?」

 サラは訳が分からん……といった風に、ヴィヴィを見返す。

「だってね? お兄ちゃんのことを『お兄ちゃん』って呼べるのは、弟妹のクリスとヴィヴィしかいないでしょう? それにクリスは『兄さん』って呼ぶし……。みんなは匠海って呼べるけれど、『お兄ちゃん』はヴィヴィだけのもの。だから特別なのっ!」

 そう言ってまた笑ったヴィヴィに、サラもつられて笑う。

「あはは! ヴィヴィは本当に、匠海が大好きなんだね?」

「うん、ヴィヴィ、お兄ちゃん大好きなのっ」

 ヴィヴィは大きく頷くと、力いっぱいそう言った。

 その背後で、がさりと落ち葉を踏む音がしたと思うと、次いで聞こえてきたのは渦中の人物の声。

「あ、サラとヴィヴィ。やっと見つけた~。ああ、しんどい……」

 ほっとした声でそう言った匠海は、本当に疲れているみたいで両膝に手を付いてうな垂れた。

 その後ろには、既に鬼に見つけられてしまった、クリスをはじめ他の従兄弟達もいた。

「あ、見つかっちゃった」

 今頃頭を両手で隠したサラが、そう言って舌を出す。

「そんな大きな声で喋ってたら、見つかるでしょ」

 そう突っ込んだ匠海に、立ち上がったヴィヴィが不服そうに桃色の唇を尖らす。

「お兄ちゃん、おっそ~い!」

(もっと早く、ヴィヴィを一番に見つけてよぅっ)

「ヴィヴィ……、なんか、隠れんぼの定義、間違ってないか?」

 匠海が困ったようにそう妹に確認するが、初等部1年ではまだそんな難しい言葉は習っておらず、

「定義って、なあに?」

 ヴィヴィはこてと金色の頭を傾ける。

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