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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

「ま、いっか。じゃあ、次はクリスが鬼か?」

 妹の頭を撫でながら、匠海が弟を探す。

「うん……。じゃあ、50秒で隠れてね? 1,2,3……」

 ヴィヴィ達が隠れていた木の幹に、腕を付いてそう数え始めたクリスに、

「ご、50秒っ!? 逃げろ~っ」

「クリスのドS~っ!」

 従兄弟たちは焦って、蜘蛛の子を散らすように逃げまどう。

「50秒……」

 ヴィヴィはその短い時間を聞いて、戦意を喪失したのか、クリスの傍に突っ立っていた。

「ヴィヴィ、逃げないのか?」

 5メートル程先でこちらを振り返った匠海に、ヴィヴィは頷く。

「うん。だって、ヴィヴィ、一番初めに見つけてほしいの~」

 妹のその答えに、がくりと肩を落とした匠海が傍に寄ってくる。

「バカ。だから隠れんぼは、最後に見つかった人のほうが勝ちなの」

 兄のその説明に、ヴィヴィは間延びした返事を返す。

「え~、そうだったの~?」

 そんな兄妹のやり取りを聞いていたクリスが、カウントを止めてゆっくりと振り返った。

「そうだよ……。だから、早く逃げて……。10.11,12……」

 また幹に向き直ってカウントを続けるクリスに、匠海はヴィヴィを抱っこするとその場から逃げて行く。

「あはは、楽ちん~!」

 匠海の胸の中できゃっきゃとはしゃぐヴィヴィに、兄は「そうでしょうとも……」と疲れた様に呟きながら駆けて行く。

「お兄ちゃん?」

 疾走する匠海の腕の中で、ヴィヴィが兄を呼ぶ。

「なんだよっ!?」

「うふふ。だぁいすきっ えへへ」

 そう可愛らしく呟いて、兄のシャツにぎゅっと掴まったヴィヴィに、匠海は絶句する。

「……――っ ヴィヴィ、お前、それ言っとけば、僕が言う事聞くとか思ってないか?」

「……バレたか」

 桃色の舌をぺろりと出したヴィヴィは、兄の「やっぱりかっ!」という突っ込みを聞きながら笑う。

(ちがうよ? ヴィヴィは本当に、お兄ちゃんが大好きなんだよ……?)

 胸の中でそう呟いたヴィヴィは、匠海の凛々しい顔を見上げながら、幸せそうに笑った。






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