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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

 スライドドアが開けられた途端、「ヴィヴィっ!」と叫ぶような母の声が聞こえた。

「ヴィヴィ、大丈夫なの? もうあんたったら、痛みに弱いくせに変に強情なんだからぁっ! 倒れるまで我慢なんてしてないで、直ぐに言いなさいよっ!」

「マム、落ち着いて……」

 そう矢継ぎ早に言ってくるジュリアンと、宥めるクリスの落ち着いた声を聞きながら、看護師2人の手でヴィヴィが病室のベッドに移される。

「点滴しますね。チクッとしますよ」

 母の剣幕に苦笑しながら、看護師がヴィヴィの腕に点滴の針を刺し、その落下速度を調整する。

「今から担当医が病状をご説明致しますので、お母様はご一緒に来られて下さい」

 看護士がそう母を促すが、ジュリアンは心配そうに自分を見下ろしてくる。

「ごめんね、大丈夫だから。行ってきて?」

 申し訳なくてそう謝るヴィヴィの頬に、ジュリアンが掌を添えてくる。

「ええ。ちゃんと安静にしているのよ?」

 母の手の中で微笑んでみせたヴィヴィは「ん……」と頷いた。 

「じゃあ、匠海、クリス、お願いね?」

(………………え?)

 手を離しながら発した母の言葉に、ヴィヴィの瞳が硬直する。

「ああ」

「行ってらっしゃい……」

 確かに聞こえた兄の声に、ヴィヴィの華奢な身体がびくりと震えた。

(……なん、で……、ここ、に……?)

 混乱するヴィヴィの視界に、左側から妹を覗き込んだクリスの顔が入る。

「ヴィヴィ、気持ち悪くない……?」

「……う、ん……」 

 そう答えるヴィヴィが顔面蒼白なのに気付いたクリスが、心配そうに眉根を寄せる。

(ごめん……クリス……っ)

 心の中で謝ったヴィヴィは、上掛けの下から左手を伸ばし、そこにあった双子の兄の手を掴んだ。

 その手は驚いた様にぴくりと動いたが、すぐに自分の手を包み込んでくれた。

「ヴィヴィ」

 右側から掛けられた自分を呼ぶ声に、ヴィヴィはクリスの手に縋ると、口角を上げ匠海の方に首を傾ける。

「あれ、お兄ちゃん、まだこっちにいたの?」

 驚いた顔で見上げてくるヴィヴィに、匠海も「え?」と驚いた声を上げた。

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