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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章
『HI!! ヴィヴィ~っ! 元気?』
『バカ、元気じゃないから、入院してんだろう?』
『ジェイソン、うっさい! 世界フィギュア、金メダルおめでとう!』
『あ、ついでにクリスも、金メダルおめでとう!』
『ついでかよっ!?』
『英国の救急車乗ったんだな? なんか、羨ましいっ』
『病院、幽霊でなかったか~?』
『ヴィヴィの大っ嫌いな、トイレのジェニファーね?』
『怖がらせてどうするっ えっと、とにかく、元気になって、学校来いよ?』
『ねっ! みんな待ってるよ~!』
『合唱大会の曲、決めるので今、揉めてるんだ、とっとと来~い』
『クリスも、早く来ないと、面白いこと、始めちゃうぞ~?』
『じゃあね~! SEE YOU~~っ!!!』
『あ、俺まだ、喋ってないのにっ』
『おっそ~い! もう終わり』
クラスメイト全員で撮ったらしいその動画は、そこで途切れた。
「ぷっ ……ふふふっ」
ヴィヴィの顔に笑みが浮かび、静かな機内に忍び笑いが漏れる。
「はやめちゃな動画……」
クリスがヴィヴィを見て、くいと両肩を上げてみせる。
「うん。でも、面白かった! 元気でた」
まだくくくっと笑うヴィヴィは、クリスにiPadを返す。
「そ? 良かった……」
「入院してたこと、クリスがみんなに伝えたの?」
「……まあね」
何故か視線を一瞬逸らしたクリスは、小さく頷いた。
「そっか。ありがとう、クリス。……本当に、ありがとう」
そう心からの礼を言ったヴィヴィは、両腕を伸ばしてクリスの首にしがみ付いた。
「ヴィヴィが笑ってくれるなら、何だってするよ……」
そう囁きながら自分を抱きしめてくれるクリスに、ヴィヴィははっと息を飲み、そして更にしがみ付いた。
クリスの挙動不審な態度の理由は、羽田空港に着いて直ぐ明らかとなった。
ファーストクラスのラウンジで入国手続きを済ませたヴィヴィは、大げさだと断ったのに車椅子に乗せられ、リムジンへと専用通路で移動した。
そしてその先に、何社かの記者やカメラマンが待ち構えていたのだ。
「おいっ 報道陣は食い止めとけって言っただろう?」
航空会社のスタッフが、空港スタッフと思われる人間にそうきつく指示する。