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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章
「す、すみません。関係者以外立ち入り禁止にしていたのですが、どこかから侵入したみたいです」
関係者が混乱する中、ヴィヴィの肩にそっと手が添えられた。
「ヴィヴィ、今回は本当に、何も答えなくていいから」
その声の主は、先に帰国していた牧野マネージャーだった。
「警備員を配置して貰えますか?」
航空会社のスタッフにそう尋ねた牧野に、落ち着いた対応でスタッフが返す。
「ええ、勿論です。ここで暫くお待ち下さい」
「牧野マネージャー、ヴィヴィ、歩きます」
ヴィヴィはしっかりした声で、そう牧野に伝える。
「え? 大丈夫か?」
「はい。もともと大げさなんですよ。もう元気ですから」
苦笑しながら肩を竦めてみせたヴィヴィに、牧野は頷いた。
「じゃあ、警備員が来るまで座ってなさい。くれぐれも無理はするなよ?」
「はい。すみません」
そう答えたヴィヴィの目の前、クリスが車椅子の両端を握りながら跪いた。
「バーミンガム空港に救急車が到着した時、運ばれるヴィヴィの動画が撮られて、マスコミに流れたんだって……」
「……そう。ごめんね、巻き込んで……。クリスとマムは、別の車で帰ってくれない?」
もうこれ以上二人に迷惑を掛けたくないと、ヴィヴィは頼み込む。
「やだ」
「やだ、じゃなくて……」
目の前でそう可愛く言い切ったクリスに、ヴィヴィは困る。
「い・や・だ」
そう言ってがんとして譲らないクリスに、ヴィヴィは眉尻を下げて笑う。
「……ふふ。ありがとう。本当に優しい “お兄ちゃん” だね?」
(本当に……。優し、過ぎる……)
「そうだよ。今頃気づいたの……?」
何を今更、といった表情でクリスが続ける。
「ううん。ずっと前から知ってたよ」
小さく首を振ったヴィヴィは、目の前のクリスに両腕を伸ばした。
中腰になったクリスが、ヴィヴィを受け止めて抱き締めてくれる。
しばらくぽんぽんと背中を叩いてあやしてくれていたクリスだったが、
「僕が、お姫様抱っこで、車まで連れて行ってあげようか……?」
そう真顔で尋ねてきた双子の兄に、ヴィヴィはがくりと脱力した。
「か、勘弁してぇ……」
(余計に騒がれますやん……)
何故か関西弁で突っ込んだヴィヴィは、そう言いながらもにっこりと微笑んだ。