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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

 警備員が報道陣を抑える隙にリムジンへと乗り込んだヴィヴィは、静かに車が走り出す中、先ほど掛けられた質問を思い出していた。

『バーミンガム市立病院に入院されたのは、本当ですか?』

『病名は何だったのですか?』

『ファンの皆さんが心配しています。一言でいいのでメッセージをお願いしますっ』

 大体がそんな質問内容だった気がする。

 ヴィヴィはクリスの肩に凭れ掛かりながら、スマートフォンを操作した。

「牧野マネージャー。今、HPに乗せる日記の内容送りました。それでOKだったら、なるべく早くに更新して貰えますか?」

 助手席に座った牧野にそう声を掛けると、彼は自分のスマホを取り出し、内容を確認する。

「うん。これでいいよ。日本語と英語で、載せておく。バンケットで撮った、クリスとコーチとの写真も一緒にUPしていいか?」

「はい……。いいえ。表彰式後に牧野マネージャーと柿田トレーナーと5人で撮ったやつ、あれにして下さい」

(皆で、一緒に戦ったんだから……)

 そのヴィヴィの気持ちが伝わったのか、ミラー越しにこちらを見つめた牧野の顔には微笑が浮かんでいた。

「……分かったよ」



『関係者各位、ファンの皆様。

 この度は自分の不注意で混乱を招き、申し訳ありませんでした。
 
 英国の病院に検査入院し、もう既に回復しています。
 
 少し疲れが出ただけです、ご心配をお掛けしました。
 
 来季に向けてより一層頑張りますので、応援して頂けると嬉しいです。

                            篠宮ヴィクトリア』



 屋敷に帰り着いたヴィヴィを待っていたのは、心配気な表情を浮かべた使用人達だった。

 特に朝比奈はもろに顔に出ていて、ヴィヴィはその表情を見た途端、自分の執事の胸に飛び込んでいた。

「ごめんなさい。心配掛けて。でも、大丈夫だから……ね?」

 いつもなら「使用人に主が抱き着くなんて!」と目くじらを立ててお小言を言ってくる朝比奈が、ぎゅっとその胸にヴィヴィを抱き寄せた。

「お嬢様のお顔を拝見出来て、ホッとしました。お帰りなさいませ」

 そう言ってヴィヴィの両肩に手を添えてその体を離した朝比奈と、五十嵐、料理長、家令、その他の皆に、ヴィヴィはにっこりと微笑んだ。

「うん。ただいま」

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