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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第81章        

 その後、大丈夫だと言うのに強制的に寝室に押し込められたヴィヴィは、料理長の作ってくれたおかゆをゆっくりと食べ、眠りについた。

 19時。

 目を覚ましたヴィヴィは、薄暗い寝室で誰かに頭を撫でられているのに気付いた。

「……ダッド……?」

 いつもならもっと遅い時間に会社から帰宅する父の姿に、ヴィヴィは少なからず驚いた。

「ヴィヴィ……。大丈夫かい?」

「うん。元気だよ……? お腹、空いた……」

 そう現金な事を呟いたヴィヴィに、父と傍に控えていた朝比奈が安心したように笑う。

「直ぐに消化の良いものを、用意してもらいますね」

 朝比奈がそう言い置いて退室して行くのを見ていたヴィヴィは、父の視線に気づいて、ゆっくりと上半身を起こした。

「元気そうで、良かった……。倒れたって聞いて、本当に心配したぞ?」

 そう言った父の顔には、心底心配する表情と、少しの疲れが浮かんでいた。

 エキシビを観戦してすぐ帰国した父は、遠く離れた英国で倒れた娘をどれだけ心配した事だろう。

 子煩悩な父のその時の心境を思うと、ヴィヴィは胸が痛んで頭を下げた。

「うん。ごめんなさい……。心配してくれて、ありがとう」

 素直に謝り礼を尽くした娘に、父は娘とよく似た瞳を細めた。

「身体、大事にしてくれ……。お前は私とジュリアンの、愛の結晶なんだからね?」

 そう諭す様に呟き、娘の丸さの残る頬を撫でた父に、ヴィヴィは苦笑する。

「ふふ……、マムにも同じ事、言われた……」

 ヴィヴィの言葉に、父も微笑む。

「そうか……。ほら、これ見てごらん?」

 そう言って父がスーツの胸ポケットから、皮の札入れを取り出す。

 そしてその中から3枚の紙を抜き取った父は、羽毛布団の上に並べた。

「これ……」

 それはヴィヴィとクリス、そして匠海の赤ちゃんの頃の写真。
 
 汚れないようにラミネートされたそれに、父の思い入れが伝わってくる。

「ああ。3人とも可愛い赤ちゃんだった。つい昨日の事の様に思い出されるよ。あ、勿論今も、3人とも可愛いぞ?」

 懐かしそうに写真を見つめていた父は、すかさずフォローも入れてくる。

「ふふ。ありがとう」

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