この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第82章          

「先シーズンは、本当にありがとうございました。『山の魔王の宮殿にて』、シーズン序盤からずっと評価が高くて。計算されつくした振り付けでヴィヴィも凄く滑りやすかったし、シーズン中ずっとやり甲斐がありました」

 4月頭。

 篠宮邸のだだっ広い応接室の中央に、ヴィヴィと振付師の宮田賢二が向い合せに腰かけていた。

 黒縁眼鏡を掛けた宮田は、うんうんと満足そうに頷く。

「僕もシーズン中、どんどん進化していくヴィヴィとプログラムを見せて貰えて、とても幸せだったよ」

「最初の頃はアクセルも安定しなくて、ご心配をお掛けしましたが」

 そう言って「ははは」と乾いた笑いを漏らすヴィヴィに、宮田は首を振る。

「ふ。そんなのはどの選手でもよくあること。今自分が出来る精一杯で、どこまで魅せたいものを表現できるか……、それが大事だと思うよ?」

 宮田の言葉に全くその通りだと同感したヴィヴィは「はい」と笑顔で答えた。

 朝比奈が入れてくれたコーヒーを勧めながら、ヴィヴィは話を進める。

「御足労頂いてすみません。今シーズンの振り付けの事をご相談したくて。こちらに来られる用があって助かりました」

「ああ。関東の大学生に振付に来てたんだ。で、どこまで決まってる?」

 関西を活動拠点としている宮田だが、ヴィヴィは出来れば面と向かって彼に相談したかったのだ。

「曲は決めていて、SPがドビュッシーの『喜びの島』、FPがサン・サーンスの『サムソンとデリラ』です」

 ヴィヴィはすらすらとそう曲名を応えながら、宮田のために用意した音源をテーブルに乗せる。

「へえ。サムソン……。なんか意外だけど、面白そうだね。これは全て、ヴィヴィの希望?」

 宮田のその確認に、ヴィヴィは大きく頷いて微笑んだ。

「はい。今シーズンは、そうです」

「そうか」

 短い相槌を返してきた宮田の顔には、ほっとした表情が浮かんでいた。

 その宮田の様子に、ヴィヴィは先シーズン、どれだけ彼に心配を掛けていたかを身をもって悟った。

「宮田先生。ヴィヴィ、やっと分かりました。先生が出して下さった宿題の答え……」

 ヴィヴィは真っ直ぐに宮田を見つめる。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ