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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第82章
今回ジャンナに振付を断られ、今シーズンは誰に振付を依頼するか――それはとても重要な選択なのだ。
なにせ来シーズンはオリンピックの前シーズン。
今シーズンと来シーズンで、自分に合った振付の出来る振付師を探し出さなければならない。
「なるほど」
「で、宮田先生はどちらを振付けたいと思われるかな、と聞いてみたくなったんです」
ここまで説明したヴィヴィは結論を言うと、静かに宮田の返事を待った。
「あ~、そうか……。それって、すぐに答えを出したほうがいい?」
さすがに悩んでいるのだろう、宮田のその確認にヴィヴィは首を振った。
「いいえ。じっくり考えて頂いて結構です。ズエワ先生の所にはGWに行くので、それには間に合わせて頂きたいですけれど」
今は4月頭――後1ヶ月でアメリカを本拠地とする、マリーナ・ズエワのところへ振付に行くことが決定していた。
「ああ。1週間以内には返事させて貰うよ。……ふふ。とても光栄なことだね。嬉しいよ」
そう返事をした宮田の顔が本当に嬉しそうで、ヴィヴィもほっと胸を撫で下ろした。
「そう言って頂けて、ヴィヴィも嬉しいです」
「年甲斐もなく、凄くワクワクしてきた」
黒縁眼鏡の奥の瞳を輝かす宮田に、ヴィヴィは破顔する。
「あはは、やった! 宮田先生、今日、ディナー一緒にどうですか?」
「いいの?」
「はい。もちろん! クリスも楽しみにしていたし」
そこで言葉を区切ったヴィヴィは、立ち上がって隣室に控えていた朝比奈を呼ぶ。
「あと、朝比奈も」
「朝比奈が?」
「お嬢様?」
いきなりそう言われて何の事か分からない朝比奈が、不思議そうに二人を見比べる。
「ディナー後、朝比奈と飲みに行って来て下さい。明日も休み取らせますから、いくらでも深酒して下さい」
そう言って背の高い朝比奈を悪戯っぽく見上げたヴィヴィに、宮田が面白そうに乗ってくる。
「いいの? 本当に連れてっちゃうぞ?」
「お、お嬢様?」と焦った様子の朝比奈。
「どうぞどうぞ。朝比奈ここのところ、全然休み取ろうとしないから、心配なんです。朝比奈? ヴィヴィ達の事は大丈夫。もう五十嵐にお願いしちゃったから、ね?」
ヴィヴィは顔の前で両手を合わせ、自分の執事に頼み込む。