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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第82章
(多分、ヴィヴィの事が心配なんだろうけれど、ちゃんと休んで……)
「了解。しかし駄目な執事だな、お嬢様に心配かけて。俺がちゃんと説教してやる」
宮田のその言葉に、同年で飲み友達の朝比奈は、肩を竦めてみせる。
「ふふ、確かに駄目な執事ですね……」
「そんな事ないよ。心配してくれてるのは、ちゃんと分かってるから」
そう言って微笑んだヴィヴィに、朝比奈も優しげな瞳を細めた。
「しかし、早く双子が成人したらな~! 一緒に酒飲みたいよ」
宮田のその言葉に、ヴィヴィは指折り数える。
「そうですね! あ~、でもまだ、3年も先ですね」
「あ、そう言えば、エキシビは? 誰が振付するの?」
宮田が突然気づいて確認してきたその問いに、ヴィヴィはにやりとほくそ笑む。
「えへへ~。まだ、誰にも内緒ですよ?」
そう念押ししたヴィヴィは、宮田の耳元でエキシビの振付師をごにょごにょと耳打ちする。
「……へえ? あはは、それはすっごく楽しみだな!」
「ヴィヴィも、ですっ!」
そこにいた3人は顔を見合わせると、それぞれ心底楽しそうに笑った。
数日後、宮田はFP『サムソンとデリラ』の振り付けをしたいと回答してきた。
そして4月に入ってから、ヴィヴィは匠海の誕生日プレゼントの準備を始めた。
兄の執事・五十嵐にお願いし、今迄のバースデーパーティーに参加された兄の友人知人の連絡先を貰い、その20名に送るための手紙の内容を下書きし、朝比奈に手配してもらい自分で署名した。
それとは別に、手紙が着いた頃合いをみはかり、直接電話をして協力をお願いした。
そうして4月後半に入った頃、兄へのプレゼントの準備を終えたヴィヴィは、航空便で英国へと発送した。
果たしてその一連の行為に、兄を男として愛している気持ちが入っていたのかは、正直ヴィヴィ本人にも定かではない。
ただ、ずっと心の隅で気に掛かっていたのだ――世界選手権の英国で会った匠海が、とても寂しそうだった様子が。
(少しでも、お兄ちゃんの寂しさが紛らわせられれば……)
プレゼントが気に入らなければ送り返してくるか捨て置くだろう、そう思ってヴィヴィはとりあえず発送したのだった。