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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第82章
その結果、双子とも、
10月15日~18日 : NHK杯(名古屋)
10月23日~25日 : 中国杯
に参加することに決めた――少しでも早期に試合を済ませたいのと、移動距離が最短という理由で。
その希望をスケ連に伝えた当初、
「え……? 冗談……でしょう?」
と強化部長に聞き返された。
日本の男女エースが中1週間空けただけで2連戦するのだから、当然といえば当然か。
調子が良ければ万々歳だが、万が一シーズン初戦のNHK杯の出来が最悪だった場合、1週間後の中国杯までにリカバリーするのはあまりにも無謀だろう。
一種の賭けだが、しょうがない。
なにせ、こちらは受験生―― 一生に一度の大事な時期なのだから。
「はぁ~、出来れば出たいな、グランプリファイナル……」
ヴィヴィはしょうがないとは分かりつつ、そう呟く。
なにせ今年は、6年ぶりにグランプリファイナルが、ここ東京で行われるのだ。
「大丈夫。上手くいくよ……」
ヴィヴィの弱気発言に、クリスがそう言って頭を撫でてくる。
「そうそう。ヴィヴィのSPとクリスのFP、GWに振付に行くんだっけ?」
高畑のその確認に、双子は頷き顔を見合わせる。
「はい。今年はバラバラだから、ちょっと不安……」
「そう、だね……」
途端に心配顔になった双子に、高畑が苦笑する。
「まるで生き別れになるみたいな顔して……。大丈夫だよ、君達は互いにしっかりしているし。それよりヴィヴィが羨ましい。僕もズエワ女史には、現役時代に振り付け依頼してみたかったから。もちろん、ジャンナ女史にもね?」
「そうですよね。うん、ヴィヴィも楽しみですっ」
小さな顔にやる気を漲らせたヴィヴィに、クリスも頷く。
「ヴィヴィの良かったら、僕も今度、振り付け依頼してみよう……」
クリスの言う通り、金銭的・時間的に余裕があるならば、複数人に振付を依頼し、今の自分に合うものをそのシーズンに採用するというやり方もあるのだ。
3日間の振り付けを終えた高畑は「NHK杯でエキシビ見られるの、楽しみにしてるよ!」とヴィヴィに言い置き、関西に帰って行った。