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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第16章
「なんか変わったものなの?」
「変わったっていうか……。だ、誰にも、もちろんマム――コーチにも言わないでくれますか?」
「もちろん。約束する」
そう言ってくれた宮田にヴィヴィは決心すると、きょろきょろと周りを見渡す。
そして周りに誰もいないことを確認すると、背伸びをして宮田の耳の近くで「ごにょごにょ」と囁いた。
近づいていた宮田から一歩下がって、ヴィヴィは恐る恐るその表情を見つめれば、意外そうな顔をしていた。
「へえ……」
そう呟いてしげしげと見つめてくる宮田に、ヴィヴィは不安になり首を傾げる。
「へ、変ですかね? っていうか、私には無謀すぎますか?」
心配になってそう聞いてしまったヴィヴィに、宮田は小さく首を振って見せる。
「いや、ちょっと意外だっただけ……。ヴィヴィならもっとクラッシックバレエのような美しいものをやりたがると思ってたから――オリンピックシーズンだから、皆自分の得意なものをやるでしょ?」
宮田のもっともな意見に、ヴィヴィは首を竦める。
「そう……ですよね……。きっとコーチにもそう言われるだろうなと思って――」
「言えてないんだ?」
宮田の言葉にヴィヴィは首肯する。
「言ってみなよ。きっとジュリアンコーチなら頭ごなしに『ダメ』とは言わないと思うよ」
「そうですかねぇ……?」
自信のなさそうなヴィヴィに、宮田は苦笑する。
「ちゃんと話を聞いてくれると思うよ。それに僕もちょっと、ヴィヴィの『サロメ』見てみたくなってきた」
「ほ、ホントですか?」
「うん。だからちゃんと早いうちに言いなさい」
そう後押ししてくれた宮田に、ヴィヴィは恐縮しながら頭を下げる。
「はい……すみません、FSの事まで相談しちゃって」
「いや、相談してくれて逆に良かったよ。……そうか、サロメか……そうなるとSPもかなり気合入れて創らないとな」
そう零した宮田をヴィヴィが不思議そうな顔で見つめ返すと、宮田が困ったような顔で呟く。
「FSばっかり話題に上ってSPが霞まない様に、インパクトのあるもの創らないとなって」
「なるほど。でもまだFSに使わせてもらえる保証はどこにもないですけれどね……」
そう言って肩を落としたヴィヴィに「しっかりな!」と喝を入れた宮田は、クリスと話してくると言って去って行った。