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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第82章          

 さっそく取り掛かった振り付けは、新しい発見もあり、またズエワ女史のスケーターやスケートに対する懐の深い愛情を感じさせてくれる、素敵な経験となった。

 ズエワ女史が振付たものを、ヴィヴィが滑って見せる。

 要求されたものと少し違っていても、ヴィヴィが滑って見せたものの方が彼女にしっくりくると、柔軟にそちらに変更し、かといって絶対に譲れないこだわりは守り通し、より良いものを一緒に作り上げてくれた。

 また、彼女の元には名だたる生徒が沢山いた。

 日本代表のアイス・ダンサー、マリア & アルフレッド渋谷兄妹をはじめ、カナダ代表のアイス・ダンサー、テッサ・バーチャー & スコット・モアイ、アメリカ代表のアイス・ダンサー、メリル・デビアス & チャーリー・ブラック。

 アイス・ダンスの世界トップを競い合う彼らと一緒に練習をする機会を持てた事も、ヴィヴィにとっては大きな糧となった。

 まだ17歳と(年齢以上に)幼く、屈託が無く人懐っこいヴィヴィを、年上の彼らは「初めての地で寂しくない様に」といつも構ってくれた。

 食事を一緒に取ってくれたり、BBQパーティーを企画してくれたり、近くの観光に連れ出してくれたり。
 
 帰る頃にはすっかりリンクメイト達と仲良しになったヴィヴィは、「帰るのやだ~っ」と泣いてしまったところを、アルフレッド渋谷に写真と動画で撮られていた事は、後で発覚した。

「じゃあ、NHK杯で!」

 そう再会の約束をして別れたヴィヴィは、ミシガン州のデトロイト・メトロポリタン国際空港の、航空会社のラウンジで搭乗を待っていた。

「日本国際航空がスポンサーになってくれたのは、本当にありがたいね」

 目の前に座った引率の牧野マネージャーの言葉に、ヴィヴィは深く頷く。

「本当に~。飛行機代って結構、高くついちゃいますもんね」

 まあそんな分かった風な口を利きながら、ヴィヴィは幾ら掛かっているかきちんとは知らないが。

「クリスの方も、ロシアでの振付、いい感じに仕上がったらしいね?」

 牧野が続けた言葉に、ヴィヴィは満面の笑顔になる。

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