この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第82章          

「いい子だ、ヴィクトリア……」

 匠海のほうへ歩き出した妹を、誉めてくる兄の甘い声。

 ヴィヴィのその華奢な身体に、荊が巻き付く様に纏わりつき、白い肌に無数の赤い傷が生まれる。

『戻って、ヴィヴィ……っ』

「そう、素直なヴィクトリアが好きだよ……」

(だって、クリス……、お兄ちゃんが、ヴィヴィのこと「好き」って……っ)

 二人の兄の板挟みになったヴィヴィが、前方と後方を振り返りながら、迷った様に足を止める。

『ヴィヴィっ! 君だって分かってるんだろう? こんな事、許されることじゃないって……!』

 追いかけてくるクリスの厳しい声に、ヴィヴィは頭を振ると、両手で耳を押さえた。

「おいで、ヴィクトリア……。そう、あと、一歩だ――」

 その兄の声に気が付けば、ヴィヴィはもう匠海の目の前まで辿り着いていた。

 自分を見下ろす兄は、途轍もなく美しかった。

 しかしその前に立つ自分は、途轍もなく惨めったらしかった。
 
 纏っていた洋服はずたずたに裂け、荊の棘に刺された腕や足、頬から血は滲んでいた。

(お兄ちゃんっ ヴィヴィ、やっぱり、お兄ちゃんのこと――)

 そう心の中で囁きながら血の滴る両腕を伸ばし、目の前の兄の逞しい胸に飛び込んだヴィヴィは、その場に倒れた。

「おにい、ちゃん……?」

 先程まで確かにそこに存在していた兄の姿は立ち消え、待っていたのは数え切れないほどの人間からの罵声。

『新たにスポンサーも付いて、これからって時に、何て事をっ!!』

『せっかく心を籠めて振付したのにっ あの時間はなんだったのっ!』

『こんなに何本もCM撮りも済んだのに! 全てパアだっ』

『こんな醜聞っ フィギュア界始まって以来の事ですよ』

『兄妹で……っ どうして、なんでそんな馬鹿げたことをっ!?』

『汚らわしいっ もうお前なんて、娘でもなんでもない! 二度と顔を見せるなっ』

 非難と罵倒をその一身に受け、頭を抱えながら地べたに這いつくばったヴィヴィに、一本の救いの手が差し伸べられた。

 その傷一つない美しい指先、逞しい腕の先を辿って視線を上げると、そこにいたのは柔らかな微笑みを湛えた愛しい兄の匠海――。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ