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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
5月の終わり頃受けた予備校の模試『5月 難関大』は、予想を上回って良い結果だった。
どれだけ良かったかというと、模試の結果を見たヴィヴィがクリスに飛びついて、椅子に座っていた双子の兄がその勢いで転げ落ちそうになったくらい良かった。
(以前の模試の結果に比べ、明らかに弱点項目が減ってるっ! もう本当に……っ)
「本当にっ クリスのお陰だよっ!」
ひしとクリスに抱き着くヴィヴィを、兄はぽんぽんとその頭と背中を撫でてくれる。
「ヴィヴィが、頑張ったんだ……」
「ち~が~う~っ クリスが居てくれたからだもんっ」
「僕が……?」
そう不思議そうに聞き返してきたクリスに、ヴィヴィはしがみ付いていた両腕を解いて兄を見つめた。
「ほら、前に言ってくれたでしょう? 『僕を信じて、付いてらっしゃい……』って」
「うん、そうだね……」
「それからヴィヴィ、眠くても辛くても、ずっとクリスの事信じて頑張れたんだもん!」
クリスの瞳を見つめ、どれだけ自分がこの双子の兄を信頼しているかを、言葉と態度で示したヴィヴィ。
そんな妹の頬に両手を添えたクリスは、その顔を覗き込んだ。
「そっか……。じゃあ後7ヶ月、僕を信じて、また付いてきて……?」
「うんっ」
来年1月のセンター試験まで、残り7ヶ月と少し。
クリスの両掌の中でやる気満々に笑ったヴィヴィは、また両腕を伸ばして兄にしがみ付いた。
(うんっ ヴィヴィ、クリスを信じて、頑張りますっ!!)
6月に入った頃、ISUから一般向けに、グランプリシリーズの出場予定選手のアサイン(割り当て)が発表された。
やはりNHK杯と中国杯を中1週間で出場する双子には、情報番組やスポーツ番組等で驚きと心配の声が上がったが、双子は互いにHPで「頑張ります」と書くだけに留めた。
というか、正直それどころではなかったのだ。
6月――それは双子が在籍している予備校では、まさに悪夢のような月だった。
なにせ、1ヶ月に3回も模試があるのだ。