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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章         

 自分もぱくりと一口食べたヴィヴィは、ふにゃと頬を緩める。

「ホントだっ 甘~いっ あれ、カレン? ほっぺ、真っ赤だよ?」

「………………っ」

 自分の指摘にさらに赤面したカレンに、ヴィヴィは首を傾げる。、

「ヴィヴィ……」

 そう呼ばれて振り返ると、クリスがもっと寄越せという風に口を開いている。

「はいはい。クリス、甘党だもんね~。あ~~ん……。カレン、もう一口、食べる?」

 そう続けてカレンを振り返れば、親友は「えぇ……っ!?」と小さく叫んだ。

「……? ん……? カレン? 大丈夫?」

「だ、大丈夫……じゃ、ない……」

 ヴィヴィの確認にそう呟いたカレンは、椅子を引いて立ち上がると、ふらふらとカフェテリアを出て行った。

「あ、お~い、カレン……? 行っちゃった……」

 その後ろ姿を見送っていたヴィヴィの手から、クリスがプリンを取り上げて自分で食べ始めた。

(どうしたんだろ、カレン……。お手洗いかな……?)

 一人首を傾げるヴィヴィは、テーブルに向き直るとフォークを握り、ランチボックスの残りをぱくつき始めた。

 そんなヴィヴィを見つめながら、友人たちがぼそぼそと囁きあう。

「なあ……。ヴィヴィって……」とアレックスが。

「うん……。本当に、心底恋愛に関しては、鈍感なんだな……?」とジェイソンが。

「ホントに……。天然にも程があるわよねぇ……?」とジェシカが。

 竹馬の友にそんな酷評を受けている事にも気づかず、ランチを平らげたヴィヴィは、満足そうに両手を合わせた。

「ごちそうさまでした!」








 6月第4週目の土曜日。

 16時を5分ほど過ぎた頃。

『そうか。じゃあ、受験勉強は順調なんだな?』

 ヴィヴィが広げて見せた模試の成績表を見て、回線の向こうの匠海が微笑んでいた。

「うん。もう完全にクリスに“おんぶにだっこ”になってるけど。予定通り」

『クリスはいいよ。あの子はお前と一緒に居るためにやってるんだから、喜んでしてる』

「う、うん……? ふふ」

 匠海の言葉に、ヴィヴィは微笑みながら曖昧に頷くと、模試の結果を仕舞った。

『ヴィクトリア、何か困ってること、ないか?』

「え? ないよ……? 勉強もスケートも順調」

 そう答えたヴィヴィは、何でそんな事を聞くの? といった表情を浮かべた。

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