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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
でも結局、怖くて出来ない。
1週間経って、2週間経って、1ヶ月経って。
それで本当に兄から連絡が無い――それを自分で確かめるのが、怖い。
コンコン。
柔らかなノックの音に書斎の扉から覗いてきたのは、双子の兄クリス。
「いい……?」
「うん。もちろん」
ヴィヴィの顔に柔らかな微笑みが宿る。
「ヴィヴィ、模試の結果、来てた……」
一通の封筒を受け取ったヴィヴィは、ペーパーナイフで開けると中の成績表を開いた。
6月第3週目に受けた模試『第3回 センター本番』の結果。
A3サイズのそれに視線を走らせていたヴィヴィから、笑みが消えた。
妹の手からそれを受け取ったクリスが、点数と判定を確認する。
「B判定(合格圏)……。まあ、まだ6月だしね……」
クリスのその言葉に、ヴィヴィは藁にも縋るような瞳を向ける。
「く、クリスぅ……」
「ヴィヴィ? 信じる者は――?」
「す、救われるぅ~~……(-人-;)」
1週間前とは正反対の、情けない表情で両手を合唱するヴィヴィに、クリスは頷いて見せる。
「そうだよ……。ヴィヴィ、大丈夫だから……、頑張ろうね?」
「はいぃ……」
まだ不安そうな表情を浮かべるヴィヴィの頭をポンポンと撫でたクリスは、「じゃあ、17時に僕の書斎で……」と言い置いて出て行った。
ヴィヴィはよたよたと革張りの椅子に座りこむと、また成績表を樫の木のデスクの上に広げる。
1週間前はA判定に届き、このままの調子で進めばクリスの計算通りのスケジュールで行けたのに、よりによって何でこんな結果になってしまったのだろう。
「前が、まぐれ、だったのかな……」
そんな弱気な言葉まで漏れてしまう。
優先して復習するポイントを確認していたヴィヴィの表情が、焦ったものへと変化していく。
(あれ、おかしいな……。ここは、以前のテストで間違えたから、ちゃんと復習したのに……。ここも、頻出だからって、クリスと何度も確認して……。なのに何で……)
「……――っ」
頭の中にぐるぐると渦巻く疑問。
そしてクリスや周りの期待に応えられない、自分に対する焦り。
それらに耐える様に、ヴィヴィのこめかみの傍の髪がくしゃりと握り締められる。