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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第16章
揃って満面の笑みで戻ってきた二人を、日本チームの皆がキスアンドクライで迎え入れる。
一緒に点数を待ちたかったが、女子のFSのアップを始めるためにヴィヴィと宮平はバックヤードへと下がっていった。
サブコーチに見守られながら空いている通路を使ってアップをする。
正直ヴィヴィはいつもの試合より浮き足立っていた。
初めて団体戦に参加したことによる緊張もあるのだが、やはり団体戦はお祭りの様なハイな気分にさせる何かがある。
務めて平静を装って淡々とジャンプの軸を確認するヴィヴィに、サブコーチが衣装へと着替えるようにと告げる。
女子ロッカールームへと移動すると、宮平がちょうど着替えていた。
「聞いた? ペアのFS、2位だったって。ペアでは暫定3位で、チームでは暫定4位らしいよ」
「そうなんですか? それはかなり頑張らなきゃですね、私達」
女子FSを残してのこの位置だと、二人がワンツーフィニッシュしてもやっと2位に着けるくらいだろう。
オリンピック前哨戦であり、せっかく日本で開催されている試合なのだ。
なんとかして表彰台に上がりたいという気持ちがチーム内で強くある。
「うん。私、今季のFSは今までノーミスがなかったけど、なんとか頑張って纏めてヴィヴィに繋ぐよ!」
二人は固い握手を交わすと、それぞれの準備に取り掛かった。
ヴィヴィはiPodでFSのシャコンヌを繰り返し聞きながら、準備を済ますとアリーナへと向かう。
青いパネルや布で覆われていたバックヤードから出てリンクサイドへと一歩踏み出すと、場内は異様な熱気に包まれていた。
国別対抗戦の最後が女子FSに掛かっているというプレッシャーをひしひしと感じながら、隣に立つコーチ――ジュリアンを見つめる。
「何、緊張してるの?」
「そ、そりゃあ……」
にやりと笑い返してきたジュリアンに、ヴィヴィは肩を竦めて見せる。
シニアの国際試合に参戦するのはこの国別対抗戦が初めてなのだ。
昨日のSPの緊張なんて半端なかった。
直前練習や六分間練習、更衣室での雰囲気はジュニアやノービスのものとは明らかに異なってピリピリしていた。
まあ宮平が何かと気に掛けてくれたので、ヴィヴィにとっては他のシニアに上がる選手よりは恵まれたデビュー戦ではあるだろうが。