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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章         

「お疲れ様。お腹鳴っちゃいそう……」

 ひもじそうな表情を浮かべながらピンクのエッジカバーを付けたヴィヴィは、ストレッチルームに移動しようとしたが、何故かクリスにその腕を掴まれた。

「ココアでも、飲まない……?」

「え? うん、飲む~」

 クリスとリンクに併設してあるカフェテリアへと向かうと、そこには何故か朝比奈が待っていた。

「お疲れ様でした。お二人とも」

「あれ? どうしたの?」

 毎日早朝に屋敷を出発する双子は、リンクで朝比奈が用意してくれた朝食を取る事が殆どだ。

 しかし今はお昼。

 何か急用かとそう尋ねたヴィヴィに、少し離れた所から掛けられた声があった。

「ヴィヴィ~っ! クリス~っ!」

 聞き覚えのあるその声に振り替えると、そこにいた二人にヴィヴィの瞳が驚きで真ん丸になった。

「ま、マドカ~っ!?」

 リンクアリーナの自動ドアをくぐった所、こちらに笑顔で両手を振っていたのは、真行寺 円とその兄の太一。

 お互い駆け寄ると、飛びついて抱き合った二人は、きゃっきゃと明るい声を上げる。

「マドカっ 久しぶり~っ!」

「ヴィヴィ~! LINEはしょっちうしてるけど、ホント会うの久しぶりっ」

 ひしと抱き合った2人は抱擁を解き、互いを見つめあって笑った。

 ヴィヴィより10センチ低い円を見下ろすヴィヴィは、彼女の変化に気づく。

「あれ、毛先のくるくる、やめたの? あと、カラコンも」

「うん。今はストレートの気分で、カラコンは……勉強のし過ぎでドライアイになって、今、入れれない……」

「ていうか、カラーコンタクトなんて、しなくてもいいのに」

 しょぼんとした円に、後ろから歩いて着いてきた真行寺がそう続けると、その妹はきっと兄を睨む。

「私、目小っちゃいから、せめて黒目だけでもデカくしようとしてるの! お兄ちゃんには分かんないの!」

「別に小っちゃくないし、普通だと思うけど……。ま、いっか」

 今にもガルルと唸って噛みついてきそうな鬼妹に、真行寺は肩を竦めて引いた。

「真行寺さん! お久しぶりです。あ、電話では4月にお話ししましたけれど」

 そう挨拶して微笑んだヴィヴィに、真行寺も笑う。

「ああ。ヴィヴィちゃん、お久しぶり。元気そうでよかった」

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