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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
「4月に、電話……?」
そう後ろから尋ねてきたクリスは、二人に「お久しぶりです……」と挨拶した。
「あ、うん。ちょっと、頼みごとをしたんだ。真行寺さん、ご協力ありがとうございました」
「いいえ。うまくいった?」
「はい。とても喜んでくれました。皆さんのお陰です」
4月に入った頃、匠海の誕生日プレゼントの写真を集めるべく、真行寺にも手紙と電話をしていたのだ。
「クリスっ! 今日は呼んでくれてありがとね? ずっと二人に会いたかったんだ!」
円がクリスに弾けんばかりの笑顔を向ければ、クリスが頷く。
「こっちこそ、わざわざリンクまで来て貰って……。二人とも忙しいのに……」
「え? クリスが呼んだの?」
「………………」
二人のやり取りにヴィヴィが驚いてクリスを見上げれば、双子の兄は何故か遠くを見つめ沈黙するのみ。
「うふふ。ヴィヴィが元気なさそうだから、遊び&勉強しない? ってね。クリス~?」
円がにやにやしながらクリスを肘で小突けば、クリスも負けじと円に拳をぽこと落とす。
「そうだったんだっ? や~ん、クリス、ありがとう!!」
そう言ってクリスに飛び付いたヴィヴィを受け止めた双子の兄は、よしよしとその頭を撫でたのだった。
その後とにかく腹を満たそうと、母ジュリアンも加わり朝比奈が用意してくれた豪華5段お重を平らげた4人は、リンクの隅で即席スケート教室を開いた。
さすがフィギュア好きの真行寺はなかなか上手で、クリスが少し手直ししただけでかなり上達していた。
一方の円はスケート初挑戦で、へっぴり腰ながらもなんとか滑れるようになり、最後は椅子ぞりに乗ってクリスに高速で押して貰い、いたくご満悦そうだった。
その後は篠宮邸で3人揃って “目指せ東大勉強会” に明け暮れ、今年東大を卒業し、実家の稼業をついで社会人になった真行寺に教師役をして貰うという贅沢まで味わった。
「や~ん、これ、マジうまっ」
篠宮邸のダイニングルーム、その3メートル超のテーブルについた円は、心底幸せそうに頬に手を添えた。
「円……。お前こんな豪邸でのディナーに、その言葉使い……」
兄のそのお小言に、円はべえと舌を出す。