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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
「うっさいの~。いいじゃん、今はこの4人だけなんだから。ね~、ヴィヴィ?」
「うん。うちだって、いつもこんなだよね、クリス?」
「うん……」
双子のそのやり取りに、真行寺は苦笑して見せた。
真行寺は「こんな豪邸」と謙遜したが、彼らの家も代々続く老舗企業を家業とする、結構な資産家なのだ。
「真行寺さん。会社では経営企画室に入られたんですか……?」
クリスのその問いに、真行寺は小さく首を振る。
「いいや。いくら跡取り息子でも、まだぺーぺーの新入社員だからね。今は営業部に在籍していて、色んな部署を数年ずつ経験してから、経営企画に行くつもりだよ」
「そうなんですか。やっぱり現場第一で……?」
「そうだね。特にうちは、総合商社だし――」
男二人が経営談義に花を咲かせる一方、乙女二人はきゃっきゃと黄色い声を上げていた。
「ヴィヴィっ この前、パパに誕生日プレゼントで、初エステおねだりしたんだ!」
にんまりと笑う円に、ヴィヴィが羨ましげな声を上げる。
「え~っ!? いいなぁ。さすがお洒落に目がないね、マドカは~」
「勉強ばっかりで、ちょっと運動不足で、スタイル維持がね……とほほ」
155センチと少々小柄だが、出るところは出ていてスタイルのいい円に、ヴィヴィは内心首を傾げる。
「そっか~。あ、ヴィヴィも去年の年末、スパにいったや」
「え? どこどこっ?」
テーブルに身を乗り出してくる円に、ヴィヴィは斜め上を見つめてホテル名を思い出す。
「マンダリンオリエンタル……だったかな?」
「うぇっ!? 贅沢なっ」
「あ、やっぱり……? ちょうどお兄ちゃんが帰国してて……」
スパのプログラム自体は大満足だったヴィヴィは、その後の匠海の行為を思い出し、微かに眉を潜めた。
「あ、あの超絶美形のお兄様ね? やっさし~っ 奢ってくれたんだ?」
「う、うん……」
(と言うか、ヴィヴィお金払う気だったんだけど、帰る時はそれどころじゃなくて。結局奢って貰う事になったというか、なんというか……)
そう心の中で言い訳しているヴィヴィには気付かず、円は隣の席の兄・太一を振り返る。
「うちのお兄ちゃんもね~。妹をスパに連れてくくらいの甲斐性があれば、女にもモテるんだろうけどねぇ~?」