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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
「円……。なんで兄が妹を、スパなんて贅沢な所に連れて行かなければならない?」
呆れた様子でそう聞き返してくる兄に、円はふふんと笑って見せる。
「ヴィヴィのお兄様は、連れてってくれたんだって!」
「匠海さんは、特別優しいの。だってほら、ヴィヴィちゃん、こんなに素直で優しい妹だろう?」
真行寺はそうヴィヴィを褒めると、妹に向けるのとは全く正反対の優しい笑顔を向けてくる。
「私だって素直で優しい妹じゃんっ!?」
そう噛み付く円に、真行寺は肩を竦める。
「自分の欲求に素直ではあるけれど、優しいかどうかは……」
「なにお~っ!?」
目の前の兄妹のやり取りに、双子は視線を合わす。
ヴィヴィがぷっと吹き出せば、クリスも瞳だけ細めて二人を見比べた。
「あ、円のせいで笑われた」
「お兄ちゃんのせいだよっ」
なんだか微笑ましいそのやり取りに、ヴィヴィが口を挟む。
「そういえば、真行寺さんは実家に帰られらんですか?」
自分と出会ったばかりの頃は、実家を離れて大学の近くに一人暮らしをしていた真行寺は、今はどうしているのだろうかと気になった。
「……戻りました。実家に……」
そう憔悴した表情を浮かべた真行寺に、円がふふんと笑って続ける。
「当然だよね~? 跡取りなんだし。それにこんなに可愛いい妹のカテキョが出来るんだから、実家に帰って良かったでしょうが?」
「……はいはい」
その二人のやり取りに、「実家に帰ってきて」という円の要求に、最終的に真行寺が折れたのだということがもろバレだった。
「ははは……。でもマドカ、お兄ちゃん戻って来て、良かったね?」
触らぬ神に何とやら……と思いながらも、なんやかんや言いながら兄に懐いている円にそう笑顔を向ければ、彼女は心底満足そうに「うんっ!!」と頷いたのだった。
ディナー後、遊びに来てくれたお礼と、再会の約束をして真行寺兄妹を見送った双子は、クリスの書斎に移動すると顔を見合わせて息を付いた。
「ふ……。マドカ、元気だな……」
「うん! ヴィヴィ元気いっぱい貰った。ねえ、クリス?」
「ん……?」
「二人を呼んでくれて、ありがとうっ 大好き……っ」
そう感謝を口にしながら、ヴィヴィはクリスに飛び付いた。