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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章
いつもヴィヴィがクリスに抱き付いても、双子の兄はぽんぽんと軽く妹を撫でてあやすだけで、抱き締め返す事はあまり無かった。
けれど今日はぎゅっと抱き締めてくれたクリスに、ヴィヴィはその身を預けるように力を抜き、瞼を閉じた。
もう背は匠海とほぼ同じ位まで伸びて止まったクリス。
その身体は細いけれど、明らかに前と比べて筋肉が付き、徐々に大人の男のものへと変化している。
双子の兄の腕の中はいまや、ヴィヴィにとってとても落ち着く場所になっていた。
(そっか、歴代のクリスの彼女さん達は、こうやってクリスに抱き締められてるのか……)
「………………?」
(何考えてるんだろう、ヴィヴィ……。お兄ちゃんに会えなくて、とうとうかなり寂しくなってる……?)
自分のいつもと違うその思考に、内心首を傾げながら両腕の力を緩めたヴィヴィに、クリスもその腕を解いた。
じっと覗き込んだその自分そっくりのクリスは、ヴィヴィを見つめ直すと、優しく瞳を細めてくれた。
「クリス、本当に、優しいね……」
「ヴィヴィにだけ、ね……?」
真顔でそんな事を返されると、さすがのヴィヴィも照れる。
「……ふふ。ヴィヴィ、クリスの彼女さんに、いつか怒られそう」
「……そんなことは、なんじゃない……?」
小さく首を傾げたクリスにヴィヴィは、
(そういえば、クリス、新しい彼女さん出来たのかな?)
と頭の隅で思ったが口にはしなかった。
「さ、勉強勉強……」
そう妹を促したクリスに、ヴィヴィは素直に従った。
「は~い。頑張りますっ」