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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第83章         

「俺はお前しか見えてなかったんだ、ずっと、ずっと前から……。ヴィクトリア、愛しているよ」

(いやいや……。絶対それはない。うん……それはないっ!)

 何故か自信満々に心の中でそう断言するヴィヴィなのに、口から零れるのは180度反対の言葉。

「……――っ お兄ちゃん、ヴィヴィもっ ヴィヴィも愛してる」

 互いの気持ちが通じ合ったと満足そうに笑い合う匠海とヴィヴィは、もうこの世の全ての幸せを独り占めしたかのような熱い瞳で見つめあっていた。

「ふ……。やっと両思い、だな?」

「うんっ お兄ちゃんっ」

「これからは、恋人同士だよ」

(そんな馬鹿な……。夢とはいえ、無茶苦茶だ……)

 心の中ではそう突っ込んでいるのに、ヴィヴィの躰は本人の意思とは全く異なる行動を起こした。

「ね、お兄ちゃん。これ、ヴィヴィにつけて?」

 本当にどこから取り出したのか、ヴィヴィの細い掌の上に乗っていたのは、ブランドロゴが刻み込まれた小さな箱。

「これは、俺のあげたピアス……。いいよ、おいで」

 ぱかりと開かれたジュエリーケースの中に鎮座する一粒ダイヤのそれらは、眩いばかりの輝きを放つ。

(ああ……。現実世界でも、まだ一度も着けたことないのに……)

 手慣れた仕草で妹の耳にピアスを装着した匠海は、ヴィヴィの腰を強く掴むと、ゆっくりと潤ったそこを掻き回し始める。

「一緒にイこう。溶け合って、一つになろう」

「うんっ お兄ちゃん」

 心の中のヴィヴィは置いてけぼりで、勝手に盛り上がって一緒に高みを目指す兄妹。

 先程までは気持ち良かったその行為も、心から乖離すると白ける一方で。

「あんっ ヴィヴィ、ヴィヴィっ イっちゃう――っ」

 自分のその細い嬌声を耳にしながら、ヴィヴィは覚醒した。







「……何なのさ、一体……」

 薄暗い寝室で目を覚ましたヴィヴィの第一声はそれだった。

 ゆっくりと上体を起した身体は、ちゃんと睡眠を取った筈なのに、何故かそこはかとなくだるい。

「……はぁぁ~~……」

 盛大な溜め息と共に脱力したヴィヴィは、枕元の目覚まし時計をオフにすると、うんざりした表情を浮かべる。

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